外科
ご挨拶
神奈川県立こども医療センター外科は、外科系診療科の一員として鼠径ヘルニアから生体肝移植まで、広い範囲の診療を行っています。8名のメンバーで年間900件前後の手術を行い、世界に先駆けた様々な研究も行ってきました。
このホームページでは、外科の診療内容やスタッフ、代表的な病気の説明を盛り込みました。病気のあるお子様が、1日でも早く良くなるお手伝いができればと思います。
外科部長 新開 真人
外科の特色
- 年齢層は赤ちゃんから思春期まで、守備範囲は鼠径ヘルニアから生体肝移植まで、幅広い外科の治療を行っています。
- 全国トップレベルの手術数があり、乳児外科施設基準を充分に満たしています。
- また小児外科でしか診療できない病気(胆道閉鎖症や鎖肛など)については、成人になっても診療を継続しています。
- 病院によっては小児外科が停留精巣などの泌尿器疾患の手術を行っているところもありますが、当院では専門の小児泌尿器科が受け持っています。
診療内容
新生児外科疾患の治療
周産期医療部での母体搬送および院内出産が可能ですので、胎児期から出生後の治療まで、計画的な一貫した治療が可能です。国内最大級のNICUと常に連携を保ち、レベルの高い新生児外科医療を提供しています。
日帰り手術
主にそけいヘルニア(脱腸)、臍ヘルニアに対して年間300~400件の日帰り手術を行っています(喘息・けいれん等の疾患をお持ちの方・腹腔鏡下手術をご希望の方は、原則2泊3日となります)。また、小児総合病院である当院ならではのシステムとして、臍ヘルニアで臍の変形が激しい方に対しては、形成外科との共同手術を行い、臍の形を整えています。
小児がん(神経芽腫、肝芽腫、ウイルムス腫瘍、横紋筋肉腫、小児がんの肺転移など)の外科治療
血液・腫瘍科、放射線科、病理診断科とチームを編成して治療に当たっており、治療方針は患者さんごとに会議(tumor board)で検討し、決定しています。外科では腫瘍の摘出、生検、中心静脈カテーテルの挿入を担当しています。2019年の悪性腫瘍切除手術数は47件(生検除く)で、質量ともに国内トップレベルを自負しています。転移・難治症例に対しても、「あきらめない小児がん手術」をモットーに患者さんにとって有益であれば積極的に手術を行い、患者さんは全国からいらしています。肝芽腫の肺転移にICG蛍光法を世界で初めて使用し、国際雑誌に報告しました。切除不能の肝芽腫に対しては、生体肝移植が可能です。また、難治がんであるDSRCT(線維形成性小円形細胞腫瘍)に対しては、腫瘍全摘出+術中温熱化学療法を取り入れています。
胆道閉鎖症の治療
生まれて早期に行う手術(葛西手術)から生体肝移植まで、一貫した治療が可能です。生体肝移植は、県立がんセンターがドナー(臓器提供者)の手術を担当し、摘出した肝臓をこども医療センターに搬送して移植する、二施設共同肝移植を行っています。今までに69例の肝移植を行いました。胆道閉鎖症以外にも、先天性の代謝異常症、肝芽腫に対する肝移植を多く経験しているのが特徴です。
障がい児の嘔吐に対する外科治療、胃瘻や腸瘻の造設と管理
胃食道逆流症に対しては、腹腔鏡を使ったキズの小さな逆流防止手術を行っています。手術のキズが目立たないため、大変好評です。また胃瘻や腸瘻の患者さんに対しては、胃瘻外来を設置し、看護チームと協力して診療しています。最近では胃瘻からのミキサー食注入に力を入れ、患者さん向けの講習会を定期的に開いています。
内視鏡下手術
胸腔鏡、腹腔鏡を使った手術を積極的に取り入れています。何といってもキズが小さいのが特徴です。逆流防止手術以外にも、脾臓摘出、胆嚢摘出、胆道拡張症、虫垂切除、横隔膜弛緩症、肺嚢胞性疾患(CPAMなど)、重症筋無力症に対する胸腺摘出など応用範囲を広げています。
リンパ管腫に対するピシバニール、ブレオマイシン療法
頸などの場所にできるリンパ管腫は手術が困難ですが、薬の注入で改善することがあります。当科では多数の経験があり、先進的な方法も行っています。全国から患者さんがいらしています。
おへそを使った手術
従来は腹部を横に切開して行っていた手術の中で、おへそを小さく切ることによって行えるものがあります。乳児の肥厚性幽門狭窄症、新生児の腸閉鎖症、卵巣嚢腫、メッケル憩室などをこの方法でやっており、キズが目立たず、大変好評です。
主な取り扱い疾患
頚部
正中頚嚢胞、側頚瘻、梨状窩瘻などの先天性瘻孔、甲状腺疾患、リンパ管腫 など
胸部
食道閉鎖および狭窄症、食道静脈瘤、横隔膜ヘルニア、横隔膜挙上症、嚢胞性肺疾患、気管・気管支狭窄および軟化症、重症筋無力症に対する胸腺摘除術 など
腹部
肥厚性幽門狭窄症、胃食道逆流症、十二指腸閉鎖および狭窄症、腸回転異常症、腸閉鎖症、壊死性腸炎、腸重積、メッケル憩室、ヒルシュスプルング病、鎖肛(直腸肛門奇形)、炎症性腸疾患、肛門疾患、排便障害(慢性便秘も含む)、胆道閉鎖症、胆道拡張症、門脈圧亢進症、胆石症、膵疾患、脾疾患および血液疾患(ITP、球状赤血球症など)に対する脾臓手術、卵巣嚢腫、そけいヘルニア、臍ヘルニア、臍帯ヘルニア、腹壁破裂 など
腫瘍
神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫(ウイルムス腫瘍)、肺芽腫、奇形腫、横紋筋肉腫、(原発あるいは転移性)肺腫瘍、甲状腺腫瘍、悪性リンパ腫、その他の稀な腫瘍
外来診療担当表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 (第2・4) |
|
---|---|---|---|---|---|---|
午前 | - |
新開 真人 抜糸外来 |
新開 真人 北河 徳彦 望月 響子 臼井 秀仁 |
新開 真人 北河 徳彦 望月 響子 臼井 秀仁
近藤享史 |
- | - |
午後 | - |
新開 真人 ストーマ・はいせつ外来 |
術前検査 | 外来検査 | - | - |
スタッフ紹介
新開 真人 / 外科部長
専門分野 | 小児一般外科、新生児外科、腹部血管外科 |
---|---|
取得資格 | 医学博士、日本小児外科学会 専門医・指導医・評議員、日本外科学会 専門医・指導医、がん治療認定医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本周産期新生児学会、日本小児血液・がん学会、日本内視鏡外科学会、日本消化器外科学会、日本臨床外科学会、日本小児科学会、日本門脈圧亢進症学会、日本移植学会、日本肝移植学会、日本膵・膵頭移植学会 |
ひとこと | お子様の命の輝きを取り戻せるよう全力を尽くします。 |
北河 徳彦 / 外科部長・小児がんセンター長
専門分野 | 小児がん、特に肺転移・播種の積極的手術、重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術、小児栄養、特に胃瘻からのミキサー食注入、小児一般外科、新生児外科 |
---|---|
取得資格 | 医学博士、日本小児外科学会 専門医・指導医・評議員、日本外科学会 専門医・指導医、日本小児血液がん学会評議員、小児がん認定外科医、がん治療認定医、日本肉腫学会指導医・専門医、日本ハイパーサーミア学会認定医、日本移植学会移植認定医、日本静脈経腸栄養学会 認定医・評議員、NST専門療法士指導医、昭和大学医学部 客員教授 |
所属学会 | 日本小児外科学会、日本外科学会、日本小児血液がん学会、国際小児がん学会(SIOP)、日本肉腫学会、日本小児放射線学会、日本ハイパーサーミア学会、日本移植学会、日本栄養管理指導者協議会、日本静脈経腸栄養学会、日本周産期新生児医学会、日本小児救急医学会、日本小切開・鏡視外科学会、日本内視鏡外科学会 |
ひとこと | 手先を使う仕事が好きで、子供が好きだったので小児外科医になりました。初診時に不安顔だった親御さんとお子さんが、退院後の外来で笑顔を見せてくれる時が一番やりがいを感じる時です。一人でも多く、この笑顔が見られるよう、分かりやすい説明と確かな技術、をモットーに日々精進したいと思います。 |
望月 響子 / 外科医長
専門分野 | 小児内視鏡外科、小児一般外科、新生児外科、特に食道再建と内視鏡外科、思春期女児の外科疾患相談に乗ります |
---|---|
取得資格 | 医学博士、日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員、日本小児外科学会 専門医・指導医・評議員、日本外科学会 専門医・指導医、日本周産期新生児認定外科医・評議員・特任理事、がん治療認定医、小児がん認定外科医、インフェクションコントロールドクター |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本内視鏡外科学会、日本周産期新生児医学会、日本外科感染症学会、日本小児救急医学会、日本小児血液・がん学会、日本移植学会、日本女性外科医会 |
ひとこと | ベストをつくします。共に歩んでいければと思います。 |
臼井 秀仁 / 外科医長
専門分野 | 小児がん、リンパ管腫、小児内視鏡外科、小児一般外科、新生児外科 |
---|---|
取得資格 | 医学博士、横浜市立大学客員研究員、日本小児外科学会 指導医・専門医・評議員、日本外科学会 指導医・専門医、日本周産期新生児認定外科医、がん治療認定医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本小児血液がん学会、日本内視鏡外科学会、日本周産期新生児学会、日本小児救急学会、日本血管腫血管奇形学会、日本小児放射線学会 |
ひとこと | 子供と同じ目線で、子供の立場に立って医療ができればと思ってます。自分にも子供ができ、新たに親としての視点を意識するようになりました。 |
近藤 享史
専門分野 | 小児一般外科、小児内視鏡外科、小児がん、肝芽腫 |
---|---|
取得資格 | 日本外科学会 専門医、日本小児外科学会 専門医、日本内視鏡外科学会 技術認定医、がん治療認定医、医学博士 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本内視鏡外科学会、日本小児血液・がん学会、日本消化器外科学会、日本周産期新生児医学会 |
ひとこと | お子様に確かな医療を提供できるよう最善を尽くします。ご家族も含めた皆様が豊かな日々を送れるよう共に考えていきましょう。 |
盛島 練人
専門分野 | 小児一般外科 |
---|---|
取得資格 | 日本外科学会専門医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本内視鏡外科学会、日本消化器外科学会、日本腹部救急医学会、日本臨床外科学会 |
ひとこと | 至誠一貫、努めて参ります。宜しくお願い致します。 |
田中 聡志
専門分野 | 小児一般外科 |
---|---|
取得資格 | 日本外科学会専門医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本内視鏡外科学会 |
ひとこと | こどもたち自身とその家族がよりよい生活を送れるような診療を心がけます。 |
白根 和樹 / 外科医師
専門分野 | 小児一般外科 |
---|---|
取得資格 | 日本外科学会専門医 日本小児外科学会専門医 |
所属学会 | 日本外科学会、日本小児外科学会、日本小児血液・がん学会、日本内視鏡外科学会、日本周産期・新生児医学会、日本小児泌尿器科学会、日本小児救急医学会、日本栄養治療学会、日本外科代謝栄養学会 |
ひとこと | こどもたちの未来を守るような医療を提供できるよう頑張ります。 |
2019年度 外科手術件数
食道手術(食道閉鎖、気管食道裂含む) | 6 |
---|---|
胃・食道逆流防止手術 | 18 |
横隔膜ヘルニア手術 | 11 |
先天性腹壁異常手術(外反含む) | 7 |
胃手術(胃瘻、胃固定含む)(PEGは除く) | 37 |
肥厚性幽門狭窄症手術 | 8 |
腸閉鎖/狭窄症手術 | 7 |
胃腸穿孔縫合術 | 2 |
腸切除術 | 10 |
腸回転異常症手術 | 7 |
虫垂炎手術 | 17 |
観血的腸重積手術 | 0 |
メッケル憩室手術 | 5 |
人工肛門/腸瘻手術(造設/閉鎖) | 39 |
ヒルシュスプルング病根治術 | 6 |
ヒルシュスプルング病類縁疾患手術(腸瘻除く) | 0 |
腸閉塞手術 | 10 |
腸管延長術(STEP) | 0 |
腹部ドレナージ術 | 6 |
その他腹部手術 | 9 |
直腸肛門奇形手術 | 13 |
---|---|
腹仙骨会陰式 | 0 |
Pena手術 | 0 |
仙骨会陰式 | 5 |
会陰式肛門形成・肛門移行術 | 4 |
カットバック | 4 |
裂孔、痔、脱肛手術 | 15 |
---|---|
肝切除術(悪性腫瘍を除く) | 2 |
脾摘術 | 5 |
膵手術 | 0 |
胆石症手術(胆摘、総胆管切石) | 3 |
胆道閉鎖症 | 4 |
総胆管拡張症手術 | 7 |
門脈再建術 | 1 |
胆道再建術 | 2 |
肝生検 | 6 |
生体肝移植 | 1 |
腎生検 | 2 |
体表良性腫瘍手術 | 2 |
内臓良性腫瘍手術 | 17 |
悪性腫瘍手術 | 51 |
---|---|
神経芽腫 | 3 |
横紋筋肉腫 | 0 |
腎芽腫 | 0 |
肝芽腫 | 5 |
転移性肺腫瘍・肝腫瘍 | 22 |
その他 | 21 |
正中/側頸瘻、梨状窩瘻手術 | 8 |
---|---|
甲状腺手術 | 2 |
鼠径ヘルニア(陰嚢水腫を含む)手術 | 235 |
臍手術(ヘルニア、臍腸管遺残など含む) | 52 |
腫瘍生検 | 14 |
中心静脈カテーテル挿入・抜去 | 40 |
肺生検 | 0 |
肺切除(腫瘍を除く) | 7 |
その他胸部手術(胸腺、気管形成術含む) | 13 |
尿膜管遺残 | 5 |
消化管内視鏡治療(PEGも含む) | 39 |
---|---|
静脈瘤硬化 | 4 |
静脈瘤結紮 | 0 |
ポリープ切除 | 3 |
ERCP | 2 |
食道拡張術 | 13 |
その他(PEG、異物除去など) | 28 |
消化管/膣・気管支/内視鏡検査(カプセル含む) | 78 |
---|---|
血管撮影/塞栓 | 0 |
CAPDカテーテル挿入(Denverシャント含む) | 1 |
その他の手術(リンパ管腫局注を含む) | 20 |
計(延べ件数) | 861 |
---|
腹腔鏡下手術 | 190 |
---|---|
胸腔鏡下手術 | 15 |
縦隔鏡下手術 | 0 |
喉頭鏡下手術 | 0 |
内視鏡外科手術総数 | 205 |
研修医を希望される方へ
神奈川県立こども医療センター外科
臨床研修医募集
基本理念
外科一般の知識・技術を習得した者に対し、小児外科専門医となるためのトレーニングを施す。日本外科学会専門医取得後が望ましいが、必須ではない。
特徴
- 豊富な症例(泌尿器疾患なしで年間全麻手術900例前後)
- 日帰り鼠径ヘルニアから肝移植まで、あらゆる小児外科手術を網羅
- 新生児症例の充実(日本最大級のNICUとの緊密な連携)
- 腫瘍診療の充実(小児がん拠点病院)
- 中央部門の充実(小児では国内最高レベルの放射線科・病理科)
- 豊富な症例(2019年の悪性腫瘍切除47件)
- 積極的な内視鏡外科(技術認定医を中心とした指導)
- 小児病院として蓄積された50年間のノウハウ
- あらゆる小児専門家が揃う、恵まれた環境
- 学会、研究会に出やすい地理的利点
研修医の週間スケジュール
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
朝 | 回診 | 術前術後症例検討 tumor board |
回診 | 抄読会・ 予演会 NICU合同カンファ |
回診 |
午前 | 手術 | 病棟 | 手術 | 病棟 | 手術 |
午後 | 手術 | 病棟 | 手術 |
外来検査 胎児カンファ |
手術 |
勤務体制
- 患者さんごとに上級医1名と研修医1名が組んで主治医となっています。
- 研修医は外来診療はなく、基本的に病棟・手術・検査が業務です。
- 夜間、休日はオンコール体制をとっています。研修医は凡そ月に5~7回(当直含む)当たります。
- 当直は院内の外科系当直が月に1回程度当たります。1次救急はありません。
- 休日は上級医1名、研修医1名による当番体制で、それ以外の人はフリーです。
待遇
- 長期休暇は夏季8日、年末年始3日、ゴールデンウイーク3~4日程度です。
- 給与は任期付常勤医師待遇で、時間外手当も付きます。
- 医師公舎があり、安価で入居できます。
募集
随時受け付けていますので、見学等の希望者は、新開(mshinkai@kcmc.jp)宛に御連絡下さい。希望者の数等により、研修開始までの待機期間は異なります。
研修医スナップ
研修医OBから
本多昌平
2008-2010在籍
現北海道大学小児外科
2008年4月から2010年3月までの2年間、外科研修医としてお世話になりました。現在は北海道大学で勤めております。今思い返すと神奈川こども時代は目の前のこども達をこなすのに精いっぱいで一つ一つ深く考える余裕もなく、あっという間に去ってしまった2年間でした。ああすればよかったなあと思い直す事ばかりですが、いくつか心に残ったエピソードを書き述べようと思います。
2008年に神奈川に赴任するまで2年間研究に従事していたこともあり、臨床の現場の雰囲気に最初は吞まれるばかり。5月までに体重が5kg近く減り、精神的緊張こそ最も効果的なダイエット法であることを実感しました。それまで小児外科に直接携わる経験が少なく鼠径ヘルニアの手術さえおぼつかない中、次から次へと産まれてくる赤ちゃんの対応に追われながら聞き慣れない病名を教科書で探して知識を詰め込む毎日でした。臍帯ヘルニアと腹壁破裂の違いが教科書で読んでもピンとこなかったのが一目瞭然、サイロを立て腸管がどんどん腹腔内に還納されていくのを見て驚いた光景が忘れられません。腸閉鎖、鎖肛、腹壁異常など産まれてすぐに外科的処置を要する疾患は、小児外科医にとって花形である反面、多くのスペシャリスト(新生児科、麻酔科、ナースなど)の協力があって初めて一人の患児を支えていけることが実感させられました。
MMIHSの患児を初めて担当し、カテーテル感染と肝機能障害にて入退院を繰り返す児に対し常に献身的な両親の姿を見ることは、何もしてあげられないもどかしさに痛切な思いを抱くばかりでした。また自分が執刀した赤ちゃんが一度も外の空気を吸うことができずに引き取られていった時の心の重さは、今後いつまでも消えることなくのしかかるであろうつらい経験でした。
神奈川こども医療センターは各科エキスパートのレベルの高さ、スタッフの献身さ、その他多くの支えてくださる職員・ボランティアの方々によって、質、量ともに最高水準の小児医療を提供していると強く感じます。その様な環境で外科研修をおこなえた事は自分にとって非常に幸運であり、今後この経験を活かし更なる研鑽を積むべく努力していきたいと思います。