胃食道逆流症
概要
一旦胃に入った内容物(摂取内容・唾液など)が再び食道内へ逆流し、しばしば嘔吐する病気です。
次のような様々な事が起こります。
- 逆流性食道炎 胃酸を含んだ内容物が食道へ逆流するため食道壁があれて、出血を誘発する。
- 高度だと貧血を引き起こす。誤嚥性性肺炎・気管支喘息 逆流したものを嘔吐しきれず、気管内へ呑み込み、肺炎を引き起こす。また気管への刺激になり、喘息を誘発する。
- 栄養・発育障害 胃内に入った栄養物が腸へ流れていかず、嘔吐してしまうため実にならない。よって低栄養状態となり、体重減少・体力低下へつながる。
- 筋緊張亢進 逆流が頻回であると、本人は常に気持ち悪い状態が続いている。よって落ち着かない状態となり緊張が亢進、コントロールのための薬物も種類・量共に増加する。
- 逆流症と呼吸・栄養・緊張・姿勢などは上記のごとく密接に関連しているため、それぞれの悪化がさらに状況を厳しくするという悪循環をうみだします。
治療法
内科療法:体位や薬物(六君子湯など)によって症状の緩和が得られることがあります。
外科療法:内科治療が効果を示さなかったり、内科治療が長く続いているような方には、手術を検討しています。
逆流防止手術には様々な術式がありますが、当院では、Nissen(ニッセン)手術を採用しています。 これは、胃を食道に巻きつけ固定し、胃の内容物の逆流を抑える手術です。胃を巻き付けるだけですので、決して「食道をしばる」手術ではありません。したがって、経口摂取ができなくなる手術ではありません。場合により胃瘻を作る手術もあわせて行います。 基本的に腹腔鏡を使った、小さい創での手術を行っています。手術により嘔吐がおさえられ、栄養がコンスタントに入るため、全体的に調子がアップします。具体的には呼吸の安定、筋緊張の低下、貧血の改善、体重増加などです。
手術の対象になる方は、基本的には以下の3項目のどれかに該当する場合です。
- 嘔吐量が多く、栄養不良になってしまっている。
- 逆流により誤嚥することが多く、肺炎や気管支炎をおこしやすい。
- 逆流により食道が傷み(逆流性食道炎)、薬によって改善しない。
pHモニタリングの結果だけで、上記のような症状がない場合には手術の対象にならない場合があります。