病理診断科
ご挨拶
病理診断科では、手術で摘出された、あるいは検査のため(生検といいます)に採取された臓器や組織を様々な方法で染色し顕微鏡で観察することで、病気の診断をしています。
対象疾患は悪性・良性の腫瘍、感染症、自己免疫疾患、先天奇形など多岐にわたります。さらに様々なタンパク質や遺伝子の異常を特殊な方法で検出して、腫瘍や感染症などの種類、病気の原因などの詳しい検査も行っています。
病理診断科は耳慣れない診療科かもしれませんが、病気の種類や原因を明らかにすることで、診療を支える部門です。病理診断を専門とする医師と熟練した技師の共同作業で、迅速で正確な診断を得ることに勤めています。直接お目にかかることは少ないのですが、常に患者さんの傍らにいる気持ちで仕事をしています。
病理診断科の特色
常勤医師2名、非常勤医師5名、非常勤助手1名、検査助手2名、検査科の常勤技師2名と共に、病理・細胞診断を行っています。
病理診断科専用機器として、自動染色装置、自動免疫染色装置、透過型電子顕微鏡、蛍光顕微鏡、PCR装置、マイクロダイセクション装置、超低温槽、バーチャルスライド作成装置などを備え、他科との共用機器として、キャピラリー電気泳動、次世代シークエンサー、リアルタイムPCR装置などを利用しています。
診療内容
迅速診断
手術中に腫瘍の有無や悪性・良性の診断をして、手術方針決定のサポートをします。
検体を急速に凍らすことで診断に必要な顕微鏡用の切片を作成します。腫瘍以外では、ヒルシュスプルング病の腸管で神経節細胞の確認なども迅速診断の対象です。
手術検体・生検検体の診断(組織診)
手術で摘出された臓器や、検査のため採取された生検検体をホルマリンで固定して、パラフィンで包埋し顕微鏡で観察可能な切片を作成し、観察します。
凍結検体より詳細な観察が可能です。さらにパラフィン包埋切片では、特定のタンパクや遺伝子異常の有無を確認する免疫染色を追加して検討を行います。
特に診断に必要と考えられた検体では、電子顕微鏡を用いて2,000~10,000倍の超微形態の観察を行ったり、凍結検体やパラフィン包埋検体から核酸(DNAやRNA)を抽出して遺伝子異常の検索を行います。
周産期センターを有するため、多数の胎盤病理の検査実績があります。先天性腫瘍が疑われる赤ちゃんの胎盤の迅速診断にも対応しています。
細胞診
胸水・腹水・髄液など液体の検体に存在する細胞成分の評価を行います。
腫瘍細胞の有無や悪性の程度に加えて、腸管内容液からは腸の状態なども調べます。
剖検
胎児・新生児など対応の難しい症例について、地域連携室を通して院外からの依頼もお引き受けしています。
パネル検査
近年治療の難しい症例で、腫瘍組織の遺伝子異常を広範に検査することで、治療に繋がる異常を調べる検査(遺伝子パネル検査)が行われるようになりました。病理診断科では、この検査に必要な検体(パラフィン包埋切片)の準備を行っています。また、検査結果の検討会(エキスパートパネル)に参加して、遺伝子異常を病理診断に反映することで、診断の精度を高めています。
主な取り扱い疾患
悪性・良性腫瘍、先天性疾患、感染症、自己免疫疾患などを中心に、小児科領域で組織診断が必要となる幅広い疾患を対象としています。成人領域の疾患については適宜院外コンサルテーションシステムなどを活用して対応しています。
スタッフ紹介
田中 水緒 / 部長
専門分野 | 小児病理、小児固形腫瘍、先天性肺疾患 |
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取得資格 | 日本病理学会専門医、日本病理学会分子病理専門医 |
所属学会 | 日本病理学会、日本小児病理研究会、日本小児血液・がん学会、日本小児外科学会、国際病理アカデミー |
ひとこと | 病理診断がより適切な治療方針決定をアシストできるよう、最善を尽くします。 |
金田 幸枝 / 医員
取得資格 | 日本病理学会専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医 |
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田中 祐吉 / 非常勤医師
専門分野 | 小児病理、泌尿生殖器系腫瘍病理、胎盤病理 |
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取得資格 | 日本病理学会専門医・指導医 |
所属学会 | 日本病理学会、日本小児血液・がん学会、日本小児病理研究会、国際病理アカデミー |
ひとこと | 四季の移ろいと花鳥風月をこよなく愛する湘南出身横浜育ち。「形(かたち)」と分子の関係を頭の片隅に置いています。 |
本病理診断科は、本邦小児病理の草分けである三杉和章先生が米国から帰国して当センター開設時に初代の医長となって以来の歴史を持ち、診療のみならず学問的にも多くの事績を残してきています。当科の仕事で医学博士号を取得した医師は10人以上に達しています。
開設以来約34,000件の手術・生検例、約2,500件の病理解剖例が全て内部データベースとなっています。臨床各科の幅広さとレベルを反映して、それらの疾患の多彩さ、そしてこれらから得られる情報は、単独施設としては本邦屈指のものといえます。また、一貫して日本病理学会小児腫瘍組織分類委員会委員を擁し、小児腫瘍組織のアトラス作成や国際分類に携わると共に、小児腫瘍スタディーグループの病理部門を担当し、他施設からのコンサルテーション症例も多く受け付けています。
直近5年の院内症例の
組織検体・細胞診・剖検数
組織診検体数 | 細胞診検体数 | 剖検数 | |
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2018年 | 906件 | 418件 | 29件 |
2019年 | 898件 | 478件 | 17件 |
2020年 | 852件 | 535件 | 19件 |
2021年 | 888件 | 451件 | 10件 |
2022年 | 860件 | 525件 | 18件 |
院外からの剖検については地域連携室を経由してご依頼ください。