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疾患disease

神経筋性側弯症

神経筋性側弯症とは?

さまざまな神経・筋肉の疾患に伴い発症する脊柱側弯症の総称です。脳性麻痺、脊髄性筋萎縮症、筋ジストロフィーなどが代表疾患で、これらの側弯症は高頻度に合併し、且つ、高度に進行することでよく知られています。脊柱側弯の進行とともに坐位バランスが崩れ、日常生活に支障が生じます。放置して高度変形になった場合、重篤な呼吸障害が生じます。他、誤嚥、食道逆流、便秘などの症状が生じることもあります。重症心身障害児施設の患者の死因の第一位は肺炎等の呼吸器トラブルが7~8割を占め、この高度脊柱変形が強く関係していることでも知られています。

神経筋性側弯症の治療法について

これらの疾患に対する装具治療は、座位の安定確保という目的で使用されることが多く、装具で脊柱変形をコントロールするという点からは、特発性側弯症患者のような進行抑制効果は期待できないことが世界中の研究者によって証明されています。そのような限定された装具の効果と、神経筋性側弯症の場合、硬く大きな体幹コルセットは,熱こもり、褥瘡、患児のストレス、介護者の装着のしづらさなどから装具装着率が下がります。そこで神奈川県立こども医療センター 整形外科では、近年、これらの患者さんの使用を想定して、座位の安定性のみに特化した動的脊柱装具(Dynamic SpinalBrace)を軽症例から積極的に使用しています(図1)。

図1 動的脊柱装具(Dynamic SpinalBrace)

進行例に対しては、手術での適応となりますが、全身状態の考慮を踏まえた上での判断となります。欧米ではその手術によって得られる患者利益から、積極的な手術対象となっていますが、国内ではまだまだ認知が遅れていると感じます。特に、このような障害を持ったお子様達の最も近くにいる理学療法士の方々に、未だに手術適応に関して懐疑的でいらっしゃる方が少なくなく、手術考慮時に、大きな障壁となる事もまだまだよくあります。 確かに、このようなお子さん達に行う脊柱手術はほぼ骨盤から脊椎全てを矯正固定する例がほとんどです。術後動きが制約されることも少なからずあると思います。術前出来ていた寝返りが出来なくなるお子さんもいらっしゃいます。(皆、出来なくなるわけではありません。)そのような事を後ろ盾に、「手術なんてしない方がいい。」そう一言で言ってしまうのは楽かも知れません。しかし、その子が将来120度、140度というような脊柱変形にいたり、諸処の問題の中に埋もれていってしまう未来へのリスクにはどのように責任を持たれるのでしょうか?。仕方ない結末と考えるのでしょうか。

これらの疾患に伴う側弯症に対する最大の問題は、手術合併症(大量出血、術後感染、呼吸器障害など)発生率が18~68%と高いことです。しかし、十分に治療体制を整えれば、対応可能なものも多いです。そして、本手術は、手術自体も大変なのですが、術後全身管理が同じくらい大切です。その為、小児疾患の治療に長けたスタッフが協力体制を引いている神奈川県立こども医療センターのような小児専門施設で行われることをお薦めします。

整容的要素の大きい特発性側弯症と異なり、神経筋性側弯症に対する手術治療は、座位姿勢の安定、栄養状態の改善、肋骨と骨盤の接触による褥瘡の改善、風邪を引きにくくなる、など目に見える効果があり、ご家族の方や介護者の方には喜んでいただいています。まさに、生活や生命に対する改善を目指す手術だと言っても過言ではありません。 我々は、これらのご病気の側弯症術後患者様の介護者(多くがお母様)を対象にしたアンケート調査を行い、Visual analog scaleという評価法で行ったところ、介護者の手術満足度は中央値9.0/10.0と非常に高いものであり、同じ病気のお子さんがいたらこの手術を進めるとした介護者は実に76%でした。否定的回答をされたのは合併症による術創深部感染を起こしてしまった1名のみで、残りの方は否定ではなく、大きな手術なので自分達で決めるべき、というものでした。実はこのような高い満足度が得られることは驚きの新事実などではなく、海外ではずいぶん以前より知られている事実で多くの論文で報告されています。日本が遅れているというのが真実の姿なのです。

当科は20245月現在までに200例を遙かに超える神経筋性側弯症手術を手がけてきており、国内随一の執刀数になります。より安全にこの手術を行うことに最も高いPriorityを置いており、多くの患者様に矯正固定された脊柱がもたらす安定した未来の生活を享受していただきたいと願って日々邁進しております。

本手術にご興味がございましたら、日頃かかりつけの医師から当院の地域医療連携室宛てに診療状況提供書をご送付ください。こちらから受診日のご連絡を後日いたします。

まずは外来で神経筋性側弯症の基本から治療まで、時間を掛けてしっかりとお話させていただきます。

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CASE 2 術前

CASE 2 術後

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