O脚・ブローント病
O脚、ブローント病とは
日本人の赤ちゃんは生まれつきO脚(または内反膝といいます)が強いことがあります。歩きはじめの1歳から2歳くらいまでが特に変形が強くなります。その後、自然に変形が治っていくことを生理的O脚といいます(図1)。ほとんどのO脚は、生理的O脚で心配ないです。しかしO脚変形が残存し、下腿の骨の内側に負担がかかり、くちばし状に変形したり、発育障害をおこすことがあり、これをブローント病といいます。重症のO脚ではくちばし状にみえることも多く、はっきりとここまではO脚、ここからはブローント病と判断することが難しい場合もあります。
また1歳から2歳くらいまでのO脚では、うちわ歩行も強いことがあります。これは下腿が内向きになっていることが原因と考えられます。うちわ歩行はO脚が治っていくと、自然に良くなっていきます。一般的なうちわ歩行の原因は股関節の動く範囲により起こることが多いです。特に女の子では股関節があぐらをかくような方向にいきにくい形をしていることが多いので、小学校低学年くらいまでうちわ歩行が強いことがあります。たいていはそれ以降、自分で気をつけてまっすぐ歩けるようになるので、治療の必要はありません。
図1
1歳7ヶ月(左) 2歳(中) 3歳(右)
O脚、ブローント病の治療法について
以前、神奈川県立こども医療センターでO脚、ブローント病の子の経過を調べたことがあります。2歳の時に膝の関節面(内側はくちばし状の先端)と下腿の骨の角度が15度以下の場合には、後で手術が必要になったケースはありませんでした。15度以上の角度の場合には短下肢装具(膝から足までの装具)を約1年使います。この装具は下腿中央外側を外側からバンドで押さえるもので、日中歩いている時に使います(図2)。短下肢装具(膝から足までの装具)は横浜市大の前教授の腰野先生が考案したもので、長下肢装具(大腿から足までの装具)よりは、こどもが使ってくれることが多く、当センターでもこの装具を使いはじめてからO脚、ブローント病で手術を要することがほとんどなくなりました。
図2
くる病が原因でO脚になる可能性について
くる病とはビタミンD欠乏や代謝異常により生じる骨の石灰化障害のことです。食べるものが少ない昔に多く見られた病気で、今の日本ではあまりありません。しかし食物アレルギーなどにより過剰に食べるものを制限したりするとくる病になることがあります。また、遺伝性のものもあります。
くる病では強いO脚になり、レントゲン写真で関節付近の骨がうすくみえます(図3)。普通のO脚では下腿の骨だけ内反していますが、くる病では大腿の骨も内反しているケースが多く見られます。レントゲン写真でくる病が疑われる場合には血液検査を行います。
くる病と診断された場合には内分泌科で診てもらい、ビタミンDなどの薬を処方してもらいます。くる病に対しては薬の治療だけで装具治療はいらないと言う意見もありますが、変形が残ってしまうことを防ぐために、神奈川県立こども医療センターでは装具を使います。その場合、大腿の骨も内反していることが多いので長下肢装具(大腿から足までの装具)を使います(図4)。治り具合にもよりますが、普通のO脚よりは長く2~3年使用します。変形が残存する場合には手術を要することもありますが、成長中に骨切り術を行うと逆変形をきたすことがあるため、骨切り術を行う場合は成長終了後に行います。
図3
図4