良性骨腫瘍
良性骨腫瘍とは?
骨のできもの(腫瘍)といわれると、一番有名な骨肉腫を思い浮かべてびっくりされる方もおられますが、実際には命に差支えない良性の骨腫瘍の方が多いです。しかし、良性と悪性の区別が難しいケースもあり、疑わしい時には専門の施設での検査が必要です。 良性骨腫瘍で一番多いのはいわゆる外骨腫といって、関節周囲の骨がでっぱってくるものです。正式には骨軟骨腫または軟骨性外骨腫といいます(図1)。1ヶ所だけの場合と多発する場合があり、多発性では遺伝することがあります。まれですが、大人になってから悪性化することもありますので、肩や骨盤周囲の外骨腫が大人になって大きくなる時は注意が必要です。
骨がうすくなって折れやすくなるものとして骨のう腫や線維性骨異形成、内軟骨腫などがあります。幼児のレントゲン写真で膝の内側(大腿骨遠位)が丸く抜けてみえるのは線維性骨皮質欠損という心配のないものです。また、骨髄炎でも骨のできものにみえることがありますが、熱があって血液検査で炎症所見があることが多いです。
図1
良性骨腫瘍の治療法について
痛みがなく、骨折しやすくなければ、治療の必要はありませんが、大きくなっていないかどうか、半年か1年に1度の経過観察を行う場合もあります。
外骨腫では骨がでっぱって筋肉、腱、神経などを圧迫して痛みがでたりすると、その部位を削る手術をします。関節の近くで変形がでたり、関節の動きが悪くなる場合も手術をすることもあります。小さい骨のでっぱりで、なんの支障もなければ手術をする必要はありません。
骨のう腫は骨折することにより治ってしまうこともあります。上腕骨では骨折しても三角巾を3週間していると骨折は治るので、そのまま経過をみることが多いです。大腿骨の頚部という部位にできた場合には、骨折後に変形を残す危険性があるため、手術をすることが多いです。金沢大学で開発したハイドロキシアパタイト製の中空スクリューをいれることにより治療します(図2)。手術直後は骨がかえって弱くなるので、骨が強くなる3~4ヶ月は体重をかけないことが必要です。神奈川県立こども医療センターでは大きい骨のう腫では、完全に体重をかけないようにするために肢体不自由児施設に入所して治療することもあります。ただし、この手術をしても骨のう腫が一部残存し、再手術を要することもあります。
線維性骨異形成も1ヶ所だけのことと多発性のことがあります。線維性骨異形成は範囲が大きく、骨をとってしまうのが難しいことが多いので、骨が弱そうな時や骨折した時には装具を使ったり、骨を補強するような金属製の内固定材を使った手術を行います(図3, 4)。線維性骨異形成が大腿骨頚部に発生すると内反変形をきたすことがあり、程度が強い場合には外反骨切り術を行います。
図2
術前(左) 術直後(中) 術後4ヶ月(右)
図3
図4
骨折時(左) 術直後(中) 術後3年(右)