下肢長不等(足の長さが違う)
下肢長不等とは?
下肢長不等は片方の下肢がもう片方の下肢より長くなる場合と短くなる場合の二つにわけられます。長くなる場合では、血管腫やレックリングハウゼン病などの病気により血流がよくなりすぎて成長しすぎることが原因としてあげられます。また原因不明の片側肥大症という生まれつき片方の下肢が大きく長くなる病気もあります。片側肥大では下肢長差が開かないこともあるため慎重に経過観察し治療方針を決めます。短くなる場合では、生まれつきのものとして脛骨欠損、腓骨欠損、脛骨弯曲症などがあります。また、乳幼児期の化膿性股関節炎や膝関節炎が原因となって、二次的に成長障害や変形を生じることもあります。
成長が止まった段階で下肢長差が3cm以内の場合はあまり支障がでません。しかし3cm以上になってくると骨盤を傾けたり、つま先立ちをして対応しようとするので、腰が痛くなったり、膝や足に痛みがでることがあります。また足をひきずったような歩き方になることもあります。
下肢長不等の治療法について
片方の下肢が長くなる場合には成長抑制といって、骨端線(成長する軟骨部分)で骨が成長しないように固定することがあります。最近では8プレートという金属のプレートを使い固定することが多くなっています(図1)。この治療は成長が終わってからではできないので、身長が伸びる中学生の時期より前にする必要があります。また、8プレートはO脚などの変形がある場合に関節の片側だけ(O脚では外側)の成長抑制をかけることにより、変形を矯正することにも使われます。
図1
術直後(左) 術後2年(右)
片方の下肢が短くなる場合には骨延長を選択することがあります。皮膚の上から骨にワイヤーやスクリューを刺して皮膚の外で創外固定器という器械をつけます。間で骨を切って1日1mmずつ伸ばすと徐々に骨がのびていきます。また、O脚などの下肢の変形がある場合は同時に矯正できます。神奈川県立こども医療センターでは固定性の良いリング型のイリザロフ創外固定器を使っています(図2, 3)。日本では昭和の時代には認可されていなかった治療でしたので、下肢の長さに10cmくらい差があっても治すことはできませんでした。それが今では治せるようになったので画期的な治療法です。しかし欠点として、時間がかかることと、関節が固くなることがあげられます。また、傷も少々目立ってしまいます。骨のできかたにもよりますが、骨を1cm伸ばすのに創外固定器を50日くらいつけている必要があります。神奈川県立こども医療センターでは肢体不自由児施設に入所し、学校に通ってリハビリも行いながら治療を行っています。
図2
術直後(左)
術後5ヶ月(中)
術後10ヶ月(右)
図3
術前(左) 術後(右)