頭蓋縫合早期癒合症
概要
赤ちゃんの頭の骨は大人と異なって、何枚かの骨に分かれています。その骨と骨とのつなぎ目を頭蓋縫合と呼びます。頭蓋縫合早期癒合症とは、頭蓋縫合が正常よりも早期に癒合することで、頭の形が変形したり頭の中の圧が高くなったりする病気のことをいいます。主に顔や手足の形態異常などを伴う症候群性と、そうではない非症候群性に分類されます。
症候群性では遺伝子変異を認めることがあるため、疑われた場合は遺伝子検査のご相談をさせていただくことがあります。また複数の頭蓋縫合が癒合することが多く、それによって頭の中の圧が高くなることで、元気がなくなったりミルクを飲まなくなったり呼吸に支障をきたしたりすることもあるため、病態に応じて複数回の手術が必要となる可能性があります。
非症候群性では1つの頭蓋縫合が癒合していることが多く、頭の中の圧が高くなることはほとんどありませんが、整容的な観点で手術を提案させていただくことがあります。
この疾患では、早期に癒合する縫合の部位によって様々な変形が生じます。具体的には以下の当院パンフレットのような頭の形になることが多く、状態に応じて適切な治療を行います。
治療法
頭の圧を下げることと、頭の形を整えることを目的に治療を行います。当院では主に、早期に癒合してしまった頭蓋縫合を切り離す手術を行っています。術式は年齢や病態、変形の程度などによって選択する必要があります。
骨延長術
現在当院ではこの術式を主体として行っています。癒合した頭蓋縫合の骨を切開し、伸ばしたい方向に合わせて延長器を装着します。術後数日より1日1mmずつ延長を行って縫合の間隙を伸ばし、画像検査で伸ばした隙間に骨が新しく出来ていることを確認した上で5~6か月以降に延長器を摘出します。
※延長中は入院していただき、延長終了で退院となります。
※延長器装着、抜去の2回の手術が必要になります。
症例:両側冠状縫合癒合
頭が前後に短くなるのが特徴。癒合している冠状縫合の骨切りを行い、骨延長術後。
前頭部が前進し、延長した部分に新しい骨が出来てつながり、頭の容積が大きくなっているのがわかります。
術前 3DCT
術前 3DCT 上段:術直後 中段:術後1ヶ月 下段:術後6年
内視鏡下縫合切除+矯正ヘルメット装着療法
生後6ヶ月までの乳幼児期で適応のある場合施行します。内視鏡を用いるため、小さい傷での手術が可能です。癒合した頭蓋縫合の骨を切開し、術後矯正ヘルメットを用いて方向を誘導していくことで、脳の成長により頭蓋骨が正常な形となる方向へと骨を移動させることが出来ます。
※非症候群性の単一縫合の場合が良い適応とされています。
※複数回の手術が予想される場合の初回手術として施行されることもあります。
矯正ヘルメット装着療法