病理検査室
主な業務内容
- 組織診検査
- 細胞診検査
- 術中迅速検査
- 病理解剖
- 分子病理学的検査
組織診検査
患者さまから採取された組織を顕微鏡的に検索し、どのような病気か診断する検査です。病理検査室では診断のための標本の作製を行っています。
①病理組織標本の作製
組織を顕微鏡で観察するためには、組織から標本を作成する必要があります。
まずホルマリンを組織に浸透させたんぱく質を変性させて固定します。
次に固定された組織から診断のために必要な個所を2×3cm、厚さ0.5cm程度の大きさに切り出します
組織を瓶の中で固定
切り出した組織片はまずアルコールを浸透させ、脱水を行います。その後、キシレン、溶解したパラフィンと浸透させる溶媒を変えていき、最後に包埋センターという装置でパラフィンと共に埋め込み、パラフィンブロックとします。
包埋センター
パラフィンは室温では固体ですが60℃前後に加温することで液体となります。加温し溶解させたパラフィンを組織に浸透させ、冷却することにより、薄切可能な硬いブロックとなります。
パラフィンブロック
(包埋されているのはおもちゃです)
作製したパラフィンブロックはミクロトームという専用の機械で任意の厚さに薄切します。厚さは染色法によって選択されます。薄切された切片をスライドガラスに載せ、乾燥させることで染色が可能となります。
ミクロトーム
②染色
観察したい細胞や線維によって染色法が選択されます。さまざまな疾患に対応した染色を行っています。
ⅰ)HE染色:通常、最初に行われる染色でヘマトキシリン・エオジン染色と言われています。
×10
×40
核:青藍色 細胞質:鮮紅色 軟骨、細菌、石灰化物:青藍色 結合織、筋組織、赤血球:紅色
ⅱ)特殊染色:観察したい物質や細胞に応じて染色法が選択されます。
PAS染色
グリコーゲン、
糖蛋白など:赤紫色
銀染色
細網線維:黒色、
膠原線維:赤色
グロコット染色
真菌の菌壁:黒紫色~黒褐色
ベルリンブルー染色
ヘモジデリン:青色、
核:赤色
ⅲ)免疫組織化学:抗原抗体反応を利用して組織中に存在する抗原を可視化する染色方法です。酵素抗体法と蛍光抗体法をおこなっています。
a 酵素抗体法:あらかじめ酵素を結合させた抗体を組織中の目的の抗原と結合させます、その後、酵素と基質と反応させ反応物として茶色い色素が沈着すると通常の顕微鏡で観察することができます。
b 蛍光抗体法:あらかじめ蛍光色素を結合させた抗体を組織中の目的の抗原と結合させることで、特別に蛍光を見ることのできる顕微鏡で観察することができます。
酵素抗体法
蛍光抗体法
③鏡検
上記のように染色された病理組織標本は病理医(病理診断科)に提出され、病理医による鏡検の結果どのような病気であるか診断されます。
細胞診検査
患者さまより採取された髄液・喀痰・尿・胸水・腹水の中に含まれる細胞から標本を作製し、顕微鏡で細胞を観察し形態異常の検索などを行います。
①標本の作製
検体の性状と依頼された検査の目的に応じて塗抹方法を選択します。液状検体で用いられるオートスメア法や引きガラス法、粘液状や膿状の検体で用いられるすり合わせ法などがあります。
②染色
検査の目的によって染色法を選択します。
×4
×20
パパニコロウ染色
扁平上皮細胞・好中球
エオジン染色
好中球・好酸球
ギムザ染色
白血病細胞
術中迅速検査
手術中に採取された組織の診断により、切除範囲や手術の術式が決定される場合があります。その場合に迅速に結果を返すために行われるのが術中迅速診断です。
提出された組織を凍結させ、クリオスタットという専用の装置で薄切し染色を行います。
通常検体採取後30分程度で顕微鏡で観察可能な標本が作製出来ます。
クリオスタット
病理解剖
病院内でお亡くなりになった患者さまの死因究明を目的とする解剖を病理解剖と云います。病理解剖を行い体内の変化を見つけ出し、生前の診断や検査結果と照合することで、直接の死因の解明や治療の効果の判定、病変の進行度の判定など様々な角度から病気の理解を深めることができます。
当センターの剖検率は約20%と全国の病院の中でも高い数字です。
分子病理学的検査
当センターではISH(in situ hybridization)、FISH(fluorescence in situ hybridization)、PCR(polymerase chain reaction)、RT-PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)、NGS(Next-Generation Sequencing)などを用いて、小児固形腫瘍に特徴的な融合遺伝子や遺伝子変異などの検出を行っています。
FISH法の顕微鏡画像
RT-PCR法の泳動画像