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心臓血管外科

図1.心臓手術例数の年次別推移
図2.新生児心臓手術例数の推移
表1.手術症例の内訳

 当科は、先天性心臓病の手術で50年近い豊富な経験と実績を誇る日本でも屈指の小児心臓血管外科です。年間100例の小児心臓手術をおこなってきましたが、2003年以降、年間10%の増加を続け最近10年間はコンスタントに年間300例の先天性心疾患の手術をおこなっています(図1)。また、ていねいで正確な手術を心がけ、低侵襲心臓手術や無輸血開心術を積極的に導入し、チームの技術の向上と患児の術後の早期回復に努めています。全体の半数を占める、心房中隔欠損、心室中隔欠損、ファロー四徴症、グレン手術、フォンタン手術など一般的な手術では、欧米のトップレベルの施設と肩を並べるほどの早期回復と在院日数短縮を実現し、ご家族の皆様にも満足していただいています。
 また、出生直後に手術をしなければ救命できない複雑心奇形があります。このような重症心疾患の治療では出生前に心奇形の診断を確定することから始めます。そして、外科医だけでなく、新生児科医、循環器内科医、麻酔科医、さらには、看護師、相談室、そして日本ではじめて導入した「新しい命のサポートセンター」の小児看護専門看護師などなど多くの職種の専門家らの力と知識を集中し最も適した治療法を練って計画的に治療を始めます。このように、出生後24時間以内の超緊急心臓手術においては正確な胎児心エコー診断をもとに、計画出産、計画手術をおこない、極めて先進的な良好な成績を挙げています。(図2)。このような重症例の増加にも関わらず全体の年間手術死亡率は例年1%前後と安定しています。

心臓血管外科の特色

1.主な取り扱い疾患

 手術の種類と症例数を表1に示しました。新生児開心術から単心室系の疾患に対する手術までなど広範囲に手術をおこなっています。

表1.手術症例の内訳

2.早期退院

 手術では正確さと迅速さを心がけ、術後にはきめ細かな管理を行うなど良質な手術を行うことで早期退院が可能になりました。心房中隔欠損閉鎖術では術後3日目、心室中隔欠損閉鎖術では術後4日目、ファロー四徴症では術後6日目の退院が可能となりました。図3に心室中隔欠損術後の在院日数の分布を示します。全体の6割が術後4日以内に、約9割が7日以内に退院できています。早期退院は良質な手術と術後管理が相まってはじめて可能となります。つまり、その施設の総合力、医療の質を表わすと考えています。アンケート調査では家族の満足度も高く医療の質の向上を目指した早期退院の試みに力を注いでいます。

図3.退院日毎の症例数分布(VSD)

3.無輸血手術

 出血の少ない手術はよい手術です。出血が少なければ無輸血で手術を終えることができます。最近の輸血は随分安全になりましたので無輸血を無理に推し進めることはありませんが、出血量の少ない手術は良質な手術の条件のひとつです。ファロー四徴症根治術やフォンタン手術では90%という高い無輸血率を達成しています。

4.胎児診断

 新生児手術の約60%が胎児診断例であり、胎児診断された新生児の手術が多いのが当施設の特徴のひとつです。生まれてすぐに手術が必要な重症複雑心奇形の治療においても、日本で最も多数例の経験を有する新生児科医による胎児心エコー出生前診断のおかげで、計画出産、計画手術をおこなうことができ、良好な成績を挙げています。胎児心エコー診断が進歩したことで出生後に患児の治療を委ねる施設を両親自ら選択することができます。また、児の心疾患について勉強することができます。このような利点のある胎児診断ですが、診断結果を告げられる母や家族にとってはいいことばかりではありません。誰もがそうであるように、健康な赤ちゃんを当然のように期待していたところに突然、心臓に異常があるかもしれないと告げられることのショック、驚きは当事者でなければわからないでしょう。親、家族にとっては妊娠そのものが"Good news"から"Bad news"になってしまいます。当センターでは、このように精神的に大きなショックを受けた家族に寄り添い、悩みを理解し受け止めて、意思決定を支え、継続的な手厚い家族支援をおこなう専門部署、「新しい命のサポートセンター」を立ち上げました。ここを中心に多くのメンバーによってチームを組みさまざま面から家族支援行っています。

5.開かれた心臓血管外科

 一般の方々に心臓手術のことを知ってもらいたいと考えハートキッズセミナーを開催しています。心臓病は外からではその障害の程度がわかりにくい内部障害です。ハートキッズセミナーは、一般の方々へ積極的に啓蒙活動をおこない理解を深めてもらう活動です。手術で使用する人工血管、針、縫合糸、ペースメーカ、生体のりなどを展示、あるいは人工心肺装置や心臓超音波診断装置を実際に動かしてもらっています。自分で薬の重さを量り調剤し分包までしてもらう薬剤師体験や、ブタの心臓を使って実際に縫ってもらう心臓手術体験コーナーが最も人気があります。

ハートキッズセミナー

6.教育セミナー

 手術をおこなった、あるいはこれから手術を受ける心疾患をもった患児たちの家族は皆一様に不安を抱いています。手術のこと、手術後のこと、あるいは10年、20年先のことなど心配事は尽きません。しかし、「百聞は一見に如かず」です。同じ病気の方々、同じ手術を受けた方々の会を開催し不安な点や問題点などを話してもらう場を作りました。これまでに、「フォンタンの会」、「ペースメーカの会」を開催しました。大学生や成人になった患者さんからこれまでの体験を踏まえて思いを発表してもらいます。同じ病気、手術を受けた赤ちゃんをもつ若いお母さん方には、自分たちのこどもの20年後の姿をイメージすることができたととても感謝されます。

教育セミナー「フォンタンの会」

7.神奈川県立こども医療センターが登場する患者家族、職員の書いた本

  1. 『生きているだけで100点満点』 奥山佳恵著 ワニブックス 2015年
     生まれた子がダウン症であると告げられた親はどのように悩み、そして心は揺れるのだろうか。ハンディキャップを持った子を生んだという負い目を感じ、もしも健常児だったら、「もしも」とふと考えている自分に気づくと母親も父親も正直に心の内を表出している。悩みながらも、真摯にダウン症の次男「美良生(みらい)」君にいっぱいの愛情を注いでおられる様子がよくわかる。愛しているがダウン症で良かったとは思わないと自分たちの気持ちを表現し、そのうえで溢れ出るほどの愛情を注いでおられる。母親はテレビ、映画で活躍中の女優さん。母は忙しいと見えて外来へは父親とやって来ることが多かったがとても愛情を注いでおられるように感じる。
  2. 『はるかな空』 ふるたし乃歩著 文芸社 2016年
     胎児診断された無脾症、肺静脈狭窄を合併した総肺静脈還流異常をともなう単心室症。10年前の出来事だけど、今でももっとも重症な救命率の低い疾患です。そのなかでも共通肺静脈幹が全く欠損している最重症例。出生後14時間で死亡。NICUの看護婦さんや助産婦さん、相談員さん、それにK先生の愛情のこもったちょっとした気配りに危機的状況のなかでも暖かいものを感じて救われたと感謝の言葉を口にする両親です。読み進めるにつれ神奈川県立こども医療センターで働いている自分に誇りを感じました。胸を張って「神奈こ」で働いていると言いたいと思わせるそんな我々への応援歌でもあります。「たった14時間の命、でも生まれてきてくれてありがとう」と結んでいます。
  3. 『もしも病院に犬がいたら』 岩貞るみこ著 講談社 2017年
     当センターでたぶん断トツに人気のある職員は誰かと問われれば迷わずベイリーと答える。ベイリーはハワイで訓練を受けてやってきた。日本にはまだ2頭しかいないという病院で働く貴重なファシリティドッグ。ベイリーの治療力はとてつもなく大きい。注射をいやがり泣き叫ぶ子がベイリーと一緒だとぴたり泣き止み我慢するという。ベイリーが勇気をくれる。ベイリーがいれば食事も進む、苦い薬も飲んでくれる。神ってる!そんなベイリーの活動記録。
  4. 胎児心エコーのすべて 川瀧元良編集 メジカルビュー社 2017年
     詳細な胎児心エコー・スクリーニング技法から豊富な画像を用いた精査・治療法、さらには家族支援に至るまで徹底解説したチーム川瀧元良渾身の1冊。胎児心エコーに関連する最先端の知識を網羅した全441ページの教科書である。

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