第1回 海外テレビ会議(インドネシア・ハラパンキタ心臓センターと)報告
九州大学国際医療部アジア遠隔医療開発センター(TEMDEC)の協力のもとインドネシアのハラパンキタ心臓センターとの間で第1回テレビ会議を行ないました。1月22日の国際シンポジウムの際にすでにリハーサルは行っていましたので実質は第2回目です。今回のテーマはハラパンキタ心臓センターから要望があり、「動脈スイッチ手術」です。まず、私から動脈スイッチ手術の総論と3例の症例提示をおこないました(写真2)。症例(1)は通常のスムーズに経過した症例で血管拡張剤の使い方、特にChlorpromazine(CPZ)の有用性を強調しながら話しました。また、MUFや術後管理のきめ細かさなどが伝わる構成にしました。症例(2)は漫画の「医龍」の一場面で冠動脈が両大血管の間を走行し虚血を生じた9ヶ月の女児。極めて珍しい冠動脈パターンを漫画の世界で取り上げているという日本の漫画のレベルの高さに驚嘆したという少し脱線した話。症例(3)は20年前、私がハラパンキタ心臓センターに赴任して2週目に経験した症例。Dr. Jusuf Rachmat が術者、私が助手。手術は問題なく終わるもICUで上室性頻脈となった。Junctional ectopic tachycardia (JET)、当時は致死率の高い重篤な術後合併症。表面冷却で低体温として洞調律に戻すことができた。現在、20才でトロントに留学し経済学を学んでいる。
Dr 小林真理子は当センターの大血管転位症に対するSenning手術症例の長期遠隔成績を報告しました。心房スイッチ手術の成績は言われているほど悪くないという結果であった。また、同じようにSenning手術の遠隔成績は動脈スイッチ手術に匹敵するくらい良好という報告もあると考察し、インドネシアなど開発途上国ではまだ遅れて見つかること(late referral)の多い大血管転位症の外科治療としてSenning手術を選択肢として勧めたいと提案しました。
ハラパンキタ心臓センターからはDr. Budiが総論に続いて症例提示。late referralの症例でもうまくいったという生後1か月を超えた症例。2例目は左室流出路に副僧帽弁様の組織があり術中切除したが術後重度の僧帽弁閉鎖不全をきたし助けられなかったという症例について報告。
最後に、質疑応答です。ハラパンキタからはDr. AnnaからKCMCでの良好な成績についての賛辞とICU Dr.からCPZについて使ったことがないので詳しく説明して欲しいとの要望。後ほどメールで文献PDFファイル5編とそれぞれの内容をまとめた詳細を送りました。