当科では小児がんのうち、「骨軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)」という領域を担当しています。
これは読んで字のごとく、骨(ほね)にできた腫瘍と、骨よりやわらかい軟部組織(おもに筋肉、脂肪組織、皮下、結合組織、末梢神経など)に発生する腫瘍を総称した言い方で、言ってみればからだのどの部分からも発生する可能性があります。その中でも当科では整形外科領域(運動器領域)、つまり頚部(くび)より下に発生する「骨軟部腫瘍」を主に担当しています。疾患の原因からは大きく三つに分けることができます。一つ目はもともと骨や軟部組織から発生した「原発性骨軟部腫瘍」、二つ目はからだの中の他の癌から転移してきた「転移性骨軟部腫瘍」、三つめは多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などの「血液系腫瘍」が骨や軟部組織にしこりを形成したものです。この中でも、小児期の当科で取り扱うのは、原発性の骨軟部腫瘍がほとんどです。
「原発性骨軟部腫瘍」は、さらに、良・悪性、骨腫瘍・軟部腫瘍に分かれますが、良性のものとしては骨巨細胞腫、軟骨腫、脂肪腫、神経鞘腫などがあります。一方、悪性原発性骨軟部腫瘍は「骨軟部肉腫」ともいわれ、骨肉腫、Ewing(ユーイング)肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、神経肉腫など多くの種類があります。なかでも小児期には骨肉腫とEwing肉腫が多く発生します。
治療は、血液腫瘍科による術前化学療法の後に手術治療を行っています。胸壁や脊柱、後腹膜等の腫瘍に関しては、関連他科と連携を取りながら手術を行います。また、神奈川県立がんセンター骨軟部腫瘍科、横浜市立大学整形外科とも協力関係にあり、必要に応じて他施設のがん専門医の協力を仰ぎながら、治療に望みます。国立がんセンターやがん研有明病院とも情報交換をし、多角的な視野で治療に望みます。手術治療は、四肢の腫瘍の場合、術前画像評価で神経血管に安全な境界が確保できれば、患肢温存手術を主軸としています。人工関節置換、血管柄付き腓骨移植などのほか、美容的には劣りますが機能性の高い回転形成術を行うこともあります。手術後は再び、血液腫瘍科の主導の下、術後化学療法や放射線治療を行っております。リハビリテーション科とも連携し、温存患肢での歩行訓練や義足訓練などを行います。