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脳神経外科:小児脳腫瘍の手術治療について

小児のがんのうち、脳腫瘍は白血病についで多い病気です。
脳神経外科では、関連科と緊密に連携して、脳腫瘍の手術治療を行っています。

脳腫瘍に対する手術の目的

脳腫瘍に対する手術の目的は主に2つあります。

手術の一つ目の目的は、脳腫瘍がどのような種類の腫瘍なのか、確実な診断をつけることにあります。脳の腫瘍は、とても種類が多いため、腫瘍細胞を顕微鏡で詳しくみて診断する(病理診断、といいます)ことがとても重要です。その結果をもとに、関連する診療科が集まり、最も良い治療方法についてカンファレンスで話し合いをして、その後の方針を立てていきます。また、確実に病理診断がつくことで、お子さんの脳腫瘍の経過を、ある程度予測することもできます。

もう一つの目的は、腫瘍の治療のための手術です。腫瘍を取り除いて周囲の神経への圧迫を減らすことや、悪い細胞をできるだけ取り除いて、その後の化学療法などの効果を上げるために手術をします。

さらに、小児では脳腫瘍の圧迫で水頭症(脳の中の髄液が増えて脳圧が上がっている状態)となっていることが多く、そのための手術も必要となります。髄液ドレナージと言って体の外に一時的に髄液を排除して脳圧を下げることや、神経内視鏡治療、シャント手術などを組み合わせて、水頭症に関連した頭痛や嘔吐などの症状を改善させます。

とりわけ乳幼児など小さいお子さんの脳腫瘍の手術にあたって重要な点は、体が小さく全身の血液量が大人よりとても少ないため、出血をできるだけ少なくすることが必要です。そのため、化学療法などを組み合わせながら計画的に複数回に分けて手術したり、手術の前に血管内治療(脳の血管の中に細い管を入れて治療する方法:横浜市大センター病院 脳神経外科:間中浩先生と連携)で、腫瘍を栄養している血管を詰めて腫瘍の血流を減らす工夫をする場合もあります。

腫瘍摘出前
図1 摘出前
白い部分が腫瘍:手術前に血管内治療を行って摘出
腫瘍摘出後
図2 摘出後

ニューロ・ナビゲーションを用いた治療計画と手術

当院では手術の際に、ニューロ・ナビゲーションシステムを導入して、できるだけ安全に手術が実施できるようにしています。その方法は、まず頭部にマークをつけてCTやMRIを撮影します。その後、撮影された画像を専用のコンピューターで画像処理すると、立体的に病巣部を映し出すことができます。

ニューロ・ナビゲーションで作成した画像
図3ニューロ・ナビゲーションで作成した画像
緑色の部分が腫瘍

このシステムを使用することで、手術をする前に、どの方向から手術するのが最も良いかを検討したり、ご家族や患者さんに病気の場所について、立体的な画像をお見せしながら説明することにも利用しています。
また、実際の手術で、このニューロ・ナビゲーションシステムを使用して、腫瘍の部位を確認しながら手術することができます。このように、ニューロナビゲーションシステムを用いることで、合併症ができるだけ少なくなるような手術を心がけています。

3才未満の小児脳腫瘍の特殊性

とくに3歳未満では脳が弱いため放射線治療は副作用が大きく、悪性腫瘍では手術後出出来るだけ早い段階で、化学療法(抗がん剤の治療)が必要になります。また、播種(髄液に悪性細胞が浮いて脳や脊髄の様々な場所に転移すること)しやすい腫瘍も多く、手術に加えて化学療法を早期から行うことがとても重要です。当院では、乳幼児の患者さんでも、手術後できるだけ早期から血液再生医療科と連携して適切な化学療法が行える体制にあります。
また、当院は子どもの総合病院として、小児に関する全ての専門診療科がそろっており、腫瘍の治療に関連した集中治療や麻酔、お子さんの成長発達を種々支援することについても的確に行える体制にあります。

集学的な治療(手術、化学療法、放射線治療を適切に組み合わせた治療)の効果

まとめとして、特に悪性の小児脳腫瘍の治療は、手術で摘出した細胞を詳しく調べて病理診断をしっかり行い、腫瘍の種類や年齢を考えて、手術、化学療法、放射線治療をうまく組み合わせて治療することがとても大切です。
以前は治ることが難しかった髄芽腫(ずいがしゅ:小児の代表的な悪性脳腫瘍の一つです)も、手術、化学療法、放射線療法をしっかりと組み合わせることで、近年、当院でも完治する率が向上し、患者さんと外来通院でお会いできることが多くなってきています。小児の脳腫瘍の治療成績が少しでも上向くように、皆で協力して日々工夫を重ねています。

髄芽腫、PNETの当院の無病生存率の推移
図4 髄芽腫、PNETの当院の無病生存率の推移
(血液再生医療科:岩崎史記先生より)

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