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アジア新生児医療国際シンポジウム神奈川2017開催報告

トピックス

 1月21日、22日の2日間にわたり神奈川県立病院機構主催でアジア新生児国際シンポジウム神奈川が開催されました。テーマは神奈川県立こども医療センターの得意とする新生児医療、先天異常と遺伝子、そして新生児心臓手術の3つの分野に分かれ1日目はみなとみらいのパシフィコ横浜でお互いがどのように協力できるかについて話し合いました(写真1)。
 インドネシア、マレーシア、韓国から小児心臓外科医を招待しました。いずれも以前よりよく知っている、付き合いのある仲間でしたが、横浜に呼んで皆で一緒に語らうことは初めてでした。オフィシャルにも、また夜の食事会もともに有意義な会でした。彼らはそれぞれの国の事情が違い、新生児心疾患の外科治療をおこなう上ではともに異なった問題点を有していることがはっきりわかりました。インドネシアとマレーシアはいずれも人的資源(human resources)の不足が大きな問題です。技術のある外科医を育てるには時間がかかります。この2カ国とも複雑心奇形の手術を行えるのは彼らが所属する施設1カ所のみです。インドネシアでは技術をもった小児心臓外科医は5名、マレーシアでは2名のみです。絶対数が全く足りません。一方、韓国は心臓移植もすでに500例以上おこなっており(日本では約150例)むしろ日本より進んでいる部分もあります。韓国には私の紹介でインドネシアから1名留学させてもらいました。神奈川県立こども医療センターで受け入れができれば良いのですが。外科医だけでなく、循環器内科医も看護師、臨床工学士も受け入れることができ、彼らが母国に帰って教育、指導の範囲を拡げて行けば時間はかかりますが確実に専門家は増えていきます。
 2日目は、神奈川県立こども医療センターの講堂で3時間の討論をおこないました。とちぎこども医療センターの河田政明教授の上手な司会のもと活発な討論となりました。テーマは新生児心疾患に対する外科治療のタイミングです。タイミングよく治療を行なうには的確な診断が必要です。つまり、循環器内科医の数と質の充実が重要です。ここでも「教育」が重要なキーワードになります。大血管転位症に対する動脈スイッチ手術は、生後2週間以内におこなうことが望ましく、年齢が生後2週を超えると死亡率が高くなります。タイミングよく見つけられず遅れて専門家のところ来て診断が付いたときにはもう1ヶ月なって手遅れという児も多くいます。診断力不足はアジアの多くの国々が抱える問題点です。ここで、シンポジウムのなかでひとつの考えが浮かびました。動脈スイッチ手術が行われるようになってその後おこなわれなくなったセニング手術という手術がありますが、この手術なら生後3ヶ月でもできます。もちろん、30年前に日本でも欧米でも広く行われていました。手術時年齢が若く遅すぎなければ、動脈スイッチ手術の方が理論的にはよいので動脈スイッチ手術の登場を境にセニング手術は捨てられてしまいましたが、今こそ再登場させてはどうかと思ったのです。因みに、神奈川県立こども医療センターで30年前にセニング手術を受けた患者さんを調べたことがありますが、意外にも普通の生活を送っている方が多くいることがわかりました。手遅れで亡くなってしまうのを諦めず、セニング手術をやるようこれから説明して行こうと思います。
 もう一つ、2日目のシンポジウムの収穫は、神奈川県立こども医療センターの講堂とジャカルタ、そして台湾を結んだテレビ遠隔会議の成功です。インドネシアも台湾も会場の様子がくっきりとわかりましたし音声も良質でした。遠隔会議は移動の手間が省けます。特に、諸外国との交流では経済的にも時間的にもとても有利です。この遠隔システムを開発途上国でも広めることができれば国内の教育手段のひとつとしても大きな福音となります。遠隔医療の利点は枚挙に暇がありません。これからどしどし利用していこうと思いました。今回の遠隔会議では、九州大学国際医療部のアジア遠隔医療開発センターの御協力をいただきました。この遠隔会議を1回きりで終わらせるのはもったいないので、インドネシア国立ハラパンキタ心臓センターとの間で定期的におこなうことにしました。4月10日に第1回目をおこないました。2ヶ月毎に行う予定です。ゆくゆくはインドネシア国内や日本国内の諸施設にも接続拠点を拡げていきたいと思います。また、内容も外科治療に加え、各種診断、そして集中治療、人工心肺、看護など様々な分野に範囲を拡げていくつもりです。

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