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肺芽腫

肺転移巣手術

肝芽腫は肺に転移しやすい腫瘍です。JPLT-2の結果を見ると、転移していない肝芽腫の5年生存率が80%以上あるのに対し、転移のある肝芽腫では50%以下になっています。肝芽腫を治すためには手術で取ることが最も重要であると言われていますが、転移した肝芽腫に対してもこれは当てはまります。神奈川県立こども医療センターでは肺転移巣も積極的に手術をしています。
転移は複数個出ることが多いですが、多発していても、また両側でも手術は可能です。

肺転移とは

肝臓に入った血液は、肝静脈に入り、そこからすぐ近くの心臓を経て肺に入ります。肝臓内の腫瘍からこぼれだした腫瘍細胞が血液の中に入り、肺に定着してできるのが肺転移です。細胞がこぼれだしても化学療法で消去されたり自分の免疫力で退治したりするので、転移はそう簡単には起こりません。しかし化学療法が効かなくなったりすると、転移が成立します。この状態では化学療法は使えず、手術に頼ることになります。

肺転移の手術法

肺転移の手術は、肝臓のように周囲を大きく含めて取るということはしません。転移巣を中心として、ごく小範囲の肺を取ってきます。これは、肺は肝臓のようには再生しないからで、取りすぎると呼吸困難になるからです。
また、このような取り方をしても、そこから再発しやすいことはないことが分かっています。したがって、おとなの肺がん手術のような、片側の肺の1/3や半分を取るような「肺葉切除」は通常しません。

肺転移巣手術の実際

胸腔鏡を使って転移巣を取る病院もありますが、神奈川県立こども医療センターでは必ず開胸手術をしています。その理由は、

  • 小さな転移巣はCTに写りませんが、熟練した外科医の触診では分かります。胸腔鏡ではこの触診ができないため、小さな病巣を見落とす可能性があります。
  • 胸腔鏡下手術では、肺を切る際にステープラーという器具を使います。これで切ると、肺の正常な部分まで多めに取ることになり、その分、肺の機能が低下します。またその針がCTに写ってしまうため、新たな病巣が判別しづらくなります。

手術は下記の順番で進みます。

  • 開胸
    胸を切開します。通常は後側方切開と言って、肩甲骨の下の部分を横向きに切開します。その後、肋骨と肋骨の間(通常は4番目と5番目、あるいは5番目と6番目)を切って広げ、胸(胸郭)の中に到達します。これで肺が見えてきます。この時、麻酔科にお願いして、切る方の肺に(右あるいは左)空気を送らないようにしてもらいます。そうすると、もともとは空気で風船のように膨れていた肺がつぶれ、病巣が見つけやすくなります。これを分離肺換気と言います。
  • 病巣の探索
    肺転移の病巣は、通常肺の表面近くにできます。これを外科医の目と触診で探します。この時、ICG蛍光法という方法を使うと病巣が光って見え、最小0.05mm程度の極小転移も発見することができます(図3)。
  • 病巣の切除
    病巣を小範囲で切除します。切除したところからは空気が漏れるので、そこを縫合します。
  • 閉胸
    肋骨を元通りの位置に戻し、筋膜等を縫ってキズを閉じて終了です。胸の中にドレーンという管を入れ、その先をポンプにつなぎます。これは手術後に出てくる血液や空気を吸い出すものです。
ICG蛍光法により手術中に光った肝芽腫肺転移巣

手術後

肺転移巣切除術後の合併症について

  • 空気漏れ
    肺の切除した部分から空気が漏れることです。ドレーンにつないだ容器の水から泡が出るので分かります。少量であれば徐々に少なくなり、止まります。1週間ほどたっても減らない場合は、滅多にありませんが再手術をして止めることがあります。
  • 出血
    手術後に肺や血管から出血することがあります。ドレーンから出てくる血液の量や、血液検査でのヘモグロビン値の低下で分かります。多い場合は再手術をして止めますが、ほとんどありません。

肺転移巣切除の効果判定
肝臓と同様、肺転移巣もAFPを作りますので、腫瘍が完全に取り切れていれば、血中AFP値は次第に下がっていきます。

肺転移巣手術について、まとめ

成人のがんでは、肺転移があるとかなり厳しい状態と見なされますが、肝芽腫ではそうではなく、しつこく切除をしていくことで救命できることが分かってきました。肺転移は再発することも多く、時には手術が7~8回にも及ぶことがあります。それでも最終的に救命できる見込みがあるため、我々は複数回の手術でも躊躇なく挑戦します。

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