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当院の治療方針・成績

神経芽腫

神経芽腫とは

神経芽腫は神経の組織にできる悪性腫瘍(がん)です。小児がんの中でも白血病や脳腫瘍についで多い病気です。特に、乳児期から5歳未満のお子さんで発症することが多いとされています。
副腎という腎臓のすぐ上にある神経由来の臓器にできることが多く、それ以外には背骨の周辺にある神経組織からも発生します。これらの組織の中にある未熟な神経組織(成熟すると神経になるはずの芽の組織)ががん化しておきる病気です。
年間100万人あたりに約10人程度の発症と言われており、当院でも年間4~8人程度が入院治療を受けています。

神経芽腫の症状

神経芽腫の症状は、大きくなった腫瘍によるもの、腫瘍によって周囲の組織が圧迫されて起こるもの、他の臓器に転移して引き起こされるものなどがあります。
原発の多くは副腎に発生し、腹部が張ってきて見つかります。また、背骨の周囲の神経組織から発生した場合には脊髄神経を圧迫して足などの麻痺が起こることがあります。また、しばしばリンパ節や皮膚に転移して、首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れたり、皮膚の下にしこりができたりします。骨やその中の骨髄(血をつくる場所)に転移すると、痛み、発熱、息切れ、あざなどの症状がでることもあります。まれに腫瘍から産生されるホルモンの影響で、高血圧や下痢などの症状が出る場合もあります。その他、腫瘍ができる場所によって眼球の突出や、目のまわりの斑状出血、ホルネル症候群(まぶたが垂れ下がる、瞳孔が小さくなる、顔の片側の汗が少なくなる)などの症状が知られています。

しかし、無症状のまま、ときには乳幼児の健診などで偶然見つかる場合もあります。

以前は生後6ヶ月程度でマススクリーニングという検査が広く行われていましたが、現在は有効性が乏しいとして休止されています。

神経芽腫の原因

多くは原因不明です。
がん細胞が持つ、細胞の増殖に関わる様々な遺伝子の異常がわかってきていますが、家族歴を有して両親からの遺伝が認められる患者さんは約1~2%のみです。

治療前にする検査

  • 神経芽腫の細胞を検査する(生検、病理組織診断)
    腫瘍の一部を手術で取ってきて調べる検査です。病理医が顕微鏡を使って神経芽腫の確定診断を行うほか、悪性度の分類に用いるための生物学的特徴(腫瘍の正常組織との相違の程度や、増殖ペース、腫瘍の細胞がもつ遺伝子の変化など)を調べます。
  • 神経芽腫の広がりを調べる
    画像検査(レントゲン, CT, MRI, 超音波検査, 核医学検査など)や骨髄の検査により、腫瘍の細胞が体のどの部位にどのくらい広がっているかを調べます。これを「病期(ステージ)」と言います。また、広がりによって外科手術を行う時の危険度がどれくらいあるかを判定します。

神経芽腫の病理組織型

神経芽腫は神経になる芽の細胞から発生します。分化・成熟の過程がどのくらい進んでいるかによって、悪性度が変わります。成熟し正常な神経組織に近いものを神経節腫、低分化で悪性度が高いものを神経芽腫、その2つが混じっている中間のものを神経節芽腫といいます。

神経芽腫の治療

上に述べた生検や画像検査の結果による病期、病理組織型、年齢、予後と関連する染色体や遺伝子の変化などを合わせて判断し、低リスク群、中間リスク群、高リスク群に分けて治療を決めていきます。それぞれの治りやすさに合わせて適切な治療を行い、治療に伴う合併症をなるべく出さないようにするためです。

治療は、化学療法(抗がん剤)、手術、放射線治療などを組み合わせて行うことが基本です。その患者さんの状態に合わせて個別に判断して治療を決めていくため、様々な組み合わせの治療法があります。

  • 低リスク群
    予後不良因子を持たない乳児例や、病期の低い早期例が対象です。
    手術で腫瘍を完全に摘出できるようであれば、手術のみで治癒が見込める群です。ただ、最初に摘出が困難な場合には、化学療法で腫瘍を小さくしてから手術で取り切る場合などもあります。
    また、自然退縮が期待できる特殊な乳児例では、いきなり治療を加えるのではなく、慎重な経過観察を行う場合もあります。
  • 中間リスク群
    中等度の化学療法を行い、腫瘍を小さくした後で摘出手術を行います。
    手術で完全に腫瘍が取りきれない場合や、化学療法への反応が不良な場合には放射線治療を加えます。
  • 高リスク群
    強力な化学療法が必要になる群です。腫瘍の摘出手術や放射線治療をタイミング良く組み合わせて治療を行っていきます。
    造血細胞移植を併用した大量化学療法(血液の元になる細胞を治療後に入れてあげることで、強い化学療法や放射線治療の副作用である骨髄抑制からの回復をサポートし、放射線や強力な化学療法による抗腫瘍効果を狙う治療)が有効とされています。
    当院では高リスク群の患者さんには積極的に大量化学療法を行っています。患者さんの状態により、大量化学療法を1回行う場合と、時期をあけて計画的に2回(造血細胞移植もそれぞれの大量化学療法後に行う)場合があります。
  • 当院で行っている先行治療
    特に高リスク群などでは、診断時には体の中に大量の腫瘍細胞があります。治療として、化学療法で腫瘍を壊していくことを目指すのですが、治療開始後に一気に腫瘍細胞が壊れてしまい、その壊れて血流に流れ出た腫瘍細胞が腎臓につまり、体のバランスをくずしてしまい、体調が悪くなる場合があります(「腫瘍崩壊症候群」と言います)。この場合、体調が回復するまで治療を中断しなくてはならなくなり、うまく治療を続けていくことが困難になる場合があります。これを回避するために、当院では、最初は少し弱めの化学療法を1〜2コース行い、体の中の腫瘍の量を減らしてから、本格的な化学療法に入るという治療方針を取っています。
  • その他の治療、新たな取り組み
    従来の放射線治療は院内でも行っていますが、陽子線治療などが有効と考えられる場合には、実施している他の施設とも連携をして治療を行っています。
    また、MIBG治療、抗GD2抗体療法など、国内の臨床試験に参加する場合もあります。

再発・不応性神経芽腫に対する治療

初期治療を行った後に再発する患者さん、最初の治療にも反応が悪い患者さんが一定の程度いらっしゃいます。このような場合、治療法は定まっておらず、残念ながら予後がよいとは言えません。
ただし、当院では最後まで諦めない治療を目指しています。化学療法、手術、放射線治療の他、国内外の新規治療や臨床試験を積極的に取り入れて、根治を目指していきます。

当院の治療成績

当院では積極的な治療により国内外の治療成績と比べても同等か、それ以上の生存率が得られています。
ただし、治療に関連する晩期合併症などが問題になる場合もあります。様々な新規の検査や治療なども取り入れながら、さらなる治療成績の向上と合併症の低減に向けて、日夜検討を続けています。

神経芽腫の治療
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