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各種小児がんの当院の方針・成績

肝芽腫

はじめに

肝芽腫は子どもの肝臓にできる悪性腫瘍(がん)ですが、大人の肝臓がん(肝細胞がん)とは違う病気です。日本では1年に約40~60人が発症します。
子どもの肝臓にできるがんとしては他にも肝細胞がん、未分化肉腫、悪性リンパ腫、悪性胚細胞腫瘍などがありますが、いずれもまれです。また良性の血管腫が肝芽腫と間違われることもあります。

肝芽腫の症状

  • 右上腹部のしこり
  • 腹部全体が張った感じ
  • 腹痛
  • 急な嘔吐
  • 発熱<

ただし腫瘍が小さいうちは何も症状がないことがほとんどです。

こどもの腫瘍全般に言えることですが、早期発見されることは稀で、ほとんどは非常に大きくなってから見つかります。これは、こどもではがん検診や内臓系の健康診断がないことが一因です。

肝芽腫の原因

最新の分子生物学的手法を用いて、いくつかの有力な原因が調べられていますが、未だ決定的なものは分かっていません。

肝芽腫になるリスク

肝芽腫が発症しやすいいくつかの因子があります。

  • 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)
    →ご家族がこの疾患を持っている場合、ご本人がこの保因者である場合があります。
  • ベックウィズ・ヴィーデマン症候群
  • 低出生体重児

肝芽腫の病理組織型

組織型とは、がんの組織を病理医が顕微鏡で観察して診断した結果で、生検、摘出手術により明らかとなります。以前は高分化型、低分化型等に分類されていましたが、最近は改定されています。

  • (純)胎児型(以前の高分化型)
  • 胎児・胎芽混在型
  • 胎芽型
  • 大索状型
  • 未分化小細胞型
  • 上皮・間葉混合型

組織により治りやすさがある程度違い、例えば純胎児型では完全切除されれば予後が良いとされていますが、組織型以外にも多くの因子があり、一概に組織型で予後を判定することはできません。

治療前にする検査

肝芽腫と診断するためには色々な検査が必要です。たくさんの検査をすることに不安を感じるかもしれませんが、確実な診断をしなければ治療に入ることはできません。

画像検査

肝臓にどんな腫瘍が、どのくらいの大きさで、どのくらいの範囲にあるのか、また転移がないかなど、確かめるために必要な検査です。

  • エコー (超音波検査):手軽にできる検査です。これだけでも腫瘍の大体の形、質が分かります。
  • CT (コンピュータ断層撮影):放射線を使い、体の断面を撮影します。最近ではコンピュータでいろいろな切り口の画像を作成することもできますし、立体的な画像を作ることもできます。機器の進歩で撮影時間も非常に短くなりました。肝臓を調べるときには、血管を目立たせるために造影剤を点滴することが必要です。この場合には検査前の絶食が必要です。肺の時には造影は通常必要ありません。
  • CT (コンピュータ断層撮影):放射線を使い、体の断面を撮影します。最近ではコンピュータでいろいろな切り口の画像を作成することもできますし、立体的な画像を作ることもできます。機器の進歩で撮影時間も非常に短くなりました。肝臓を調べるときには、血管を目立たせるために造影剤を点滴することが必要です。この場合には検査前の絶食が必要です。肺の時には造影は通常必要ありません。
  • CT (コンピュータ断層撮影):放射線を使い、体の断面を撮影します。最近ではコンピュータでいろいろな切り口の画像を作成することもできますし、立体的な画像を作ることもできます。機器の進歩で撮影時間も非常に短くなりました。肝臓を調べるときには、血管を目立たせるために造影剤を点滴することが必要です。この場合には検査前の絶食が必要です。肺の時には造影は通常必要ありません。

血液検査 (特に血中のアルファ・フェト・プロテイン(AFP)の値を調べる)

AFP(アルファ・フェト・プロテインの略。通常「エイ・エフ・ピー」と言います。)は、肝芽腫の腫瘍マーカーです。肝芽腫ではほぼ全例でAFPの値が高くなります。また治療をして腫瘍が小さくなればAFPの値が下がってきますので、治療の効果を見るためにも定期的に測ることが必要です。このAFPがあるおかげで、肝芽腫は他の腫瘍と比べて、術後の再発がより早く分かることが多いです。

AFPの正常値 → 10ng/ml以下

検査の結果による治療方針の決定

腫瘍の広がりの評価

画像診断により、がんが肝臓のどのくらいの部分を占めているかが分かります。当然、たくさん占めている方が重症になります。これを数字であらわす方法が、『PRETEXT』(プリテクスト。Pre-Treatment Extent of Disease)というものです。
これは図のように肝臓を4つの部分に分けて、どの部分を腫瘍が占めているかで分類します。
初診時にPRETEXTが1、または2であれば化学療法をしないで手術で完全切除することが可能なこともありますが、PRETEXTが3、または4ではそれが困難なので、まず抗がん剤による化学療法を行います。
化学療法後にも同様に評価(POSTTEXT)します。
POSTTEXTが4ならば残せる肝臓が無いので、手術をするのであれば肝移植になります。

PRETEXT
(肝臓を大きく四つに分け、腫瘍がどの部分を占めているかで分類します。) PRETEXT

PRETEXTの他、下に書いた4つの「肝外進展」と「遠隔転移」の有無を確認して治療を行います。

その他に

  • V→下大静脈または全ての肝静脈内へ腫瘍が入り込んでいる場合。
  • P→門脈本幹、または左右両方の門脈内に腫瘍がある場合。
  • E→VやP以外の肝外進展がある場合。
  • R→腫瘍破裂がある場合。
  • M→遠隔転移がある場合。

化学療法の前にする検査

手術の前に術前化学療法という抗がん剤を使った治療をするときは、化学療法に入る前の状態を把握するために血液検査や画像検査の他にも次のような検査をします。

  • 聴力検査
  • 心機能検査(心エコー・心電図)
  • 腎機能検査(尿検査)
  • 骨髄検査

肝芽腫の治療

PRETEXTによって治療内容や治療の順序が違ってきます。詳しくは次ページの『PRETEXT別の治療コース』を参照してください。
肝芽腫は希少疾患ですので、新しい治療方法を開発していくためには全国の症例を集めて研究しなければ数が足りません。そのため、グループスタディという方法が取られています。
これは全国の肝芽腫を治療する施設が共通の方針で治療をして、その結果を調べ、その方針が正しかったのかどうかを検討するものです。
2016年現在、肝芽腫では「JPLT―3(ジェイピーエルティー・スリー)」という治療プロトコールが始まっています。詳細をここで公開することはできませんが、保護者であれば主治医からコピーをもらって内容を詳しく知ることが出来ます。
今後の治療がどのようになっていくのか、全体像を知りたい場合はまず主治医にプロトコールのコピーをもらうようにしてください。
またプロトコールでの治療で思うような結果が出ない場合は、別の方法を取ることができます。主治医とご相談下さい。

メインは手術

肝芽腫では手術によって腫瘍を残らず取りきれるかどうかが一番のカギです。神経芽腫など他の小児がんと比べても、肝芽腫は手術で取ることの重要性が高いがんと言えます。また、肺などに転移をしていても出来る限り手術で取ります。
腫瘍が小さく肝臓の中だけにある場合はまず手術で腫瘍を取りますが、腫瘍がある程度大きい場合や肝臓の外にも進んでしまっている場合には、まず抗がん剤を使った化学療法をして腫瘍を小さくしてから手術を行います。
どうしても肝臓が残せないくらい腫瘍が大きい、あるいは腫瘍が肝臓の多数の重要な血管に食い込んでいる場合は、肝移植が必要になります。

手術前に行う化学療法を「術前化学療法」と言います。また、手術の後も再発を極力防ぐために「術後化学療法」を行います。
これらをどのタイミングで、どのような薬を使い、手術はどのタイミングで入れるのかを決めるのが「プロトコール」です。
JPLT-3ではリスク分類ごとにプロトコールが定められており、最初の診断時にリスク分類が決まり、この臨床研究の参加に同意されればいよいよ治療開始となります。

術前化学療法

手術の前に行う化学療法です。
PRETEXT―1で肝外進展のない場合はしませんが、それ以外のPRETEXT―2、3、4は基本的に数回の術前化学療法を行います。

小さな子どもに「抗がん剤は使いたくない」と思う親は多いでしょう。
たしかに抗がん剤は副作用もありますし、副作用に苦しむわが子を見守らなければならないのは親としてとても辛いものです。けれども必要な化学療法をやらなければやがてがん細胞はまた勢いづくことがあります。
「子どもの命を救う」 というのが最優先です。 まずはそのことを考えるようにしましょう。
肝芽腫は確かに10年20年前と比べると格段に「治る」ようになりました。けれども最初から甘い覚悟でも何とかなるほど「治る」わけではありません。化学療法がほぼ必要ないタイプの肝芽腫では手術のみで化学療法をしないこともありますが、肝芽腫全体のごくわずかです。それ以外のタイプには必要な治療です。

手術

肝芽腫は小児にできる肝臓腫瘍の代表的なものですが、発生頻度は我が国で年間50例前後と多くはありません。
肝芽腫は他の小児がんと比べ、手術で取ることが重要なことが特徴です。良い化学療法が無かった時代には巨大な腫瘍を果敢に手術し、術中に亡くなるというようなこともありました。現在は化学療法が進歩し、巨大な腫瘍でも小さくしてから安全に手術できることが大半です。またそれでも取れないような腫瘍は肝移植という手があります。肺などの転移に対しても、手術を積極的に行います。

肝臓のしくみ

肝臓の手術は、がんの部分だけをくり抜いて取ることはできません。通常、がんの部分を含めた肝臓の一部分ごと切除します。これは、がんが飛び散っているかもしれない、がんの周囲も取るという意味があります。
肝臓にできたがんを取れるか取れないか、それは前記した「がんが肝臓のどのくらいの部分を占拠しているのか」と「重要な血管が大丈夫か」によります。
そのことを理解するためには、肝臓の構造を知ることが必要です。

  • 肝臓は大きく左右に分かれる。
  • さらに細かく、4つの区域に分けることができる。(←これが重要、図2)
  • もっと細かく、8つの部分に分けることができる。
  • 肝臓に血液を送り込む血管は「門脈」と「動脈」で、出て行く血管は「静脈」である(図1)。
  • 肝臓から腸に消化液(胆汁)を出す管を胆管と呼ぶ。

以上が重要です。1つずつ説明します。

  • 肝臓は大きく「左葉」と「右葉」に分かれます。もしこのどちらかに腫瘍ができた場合は、大きく片方の肝臓を取ってしまう手術ができます。取ってしまった肝臓は、トカゲの尻尾のようにまた再生します。
  • 肝臓は大きく「左葉」と「右葉」に分かれます。もしこのどちらかに腫瘍ができた場合は、大きく片方の肝臓を取ってしまう手術ができます。取ってしまった肝臓は、トカゲの尻尾のようにまた再生します。
  • さらに細かく、外側区は2つ、内側区は1つ、前区は2つ、後区は2つ、それに尾状葉という部分が加わり8つに分かれます。がんが非常に小さくて8つのうち1つにあるような場合は、その小さな部分だけ取ることもありますが、肝芽腫では滅多にありません。
  • 肝臓だけにある特有の血管が「門脈」で、左右2本あります。これは腸とつながっており、腸で吸収した栄養を肝臓に運ぶ役割をしています。この血管にまでがんがある場合、通常の手術では取れないことがあります。一方、静脈は3本ありますが、これも3本ともがんにやられると肝移植以外に方法がありません。
  • 肝臓は300種類以上の働きをすると言われている、体の中の工場です。その工場で作られる消化液で、脂肪を消化したりする働きがあるのが胆汁です。便が黄色いのはこの胆汁の色であり、肝臓が働かなくなる(肝不全)と黄疸が出るのも、この胆汁のためです。これを運ぶ管が肝臓から左右2本出ており、十二指腸につながっています。がんがここに及ぶことは滅多にありませんが、2本ともやられている場合は切除できません。
肝臓の血管

肝切除か肝移植か

肝芽腫に対する手術は、大きく2つに分かれます。肝切除術か、肝移植術です。可能なら肝切除術が望ましいです。その理由は、肝移植(生体肝移植)は健康な人(肝臓提供者)にメスを入れなければならないこと、また一生免疫抑制剤を飲まなければならないこと、などの問題があるからです。

肝切除をするには、基本的には以下の条件が必要です。

  • 腫瘍のある肝臓を切除した場合、最低1区域が残る
  • 肝静脈(3本)、門脈(左右2本)、肝動脈(左右2本)が、それぞれ最低1本残る

逆に、上記が満たせない場合は、肝移植が必要になります。

最初から腫瘍が小さければすぐに肝切除術を行います。もし大きければ、肝切除できるようにするため、化学療法で腫瘍を小さくします。それでも肝切除が不可能な場合は、肝移植をします。

肝切除の方法

肝臓を4区域に分けて、どの区域に腫瘍があるかをCTやMRIなどの画像診断で決定します。それに基づき、4つの区域のどれを取るかを決めます。肝芽腫でよく行われる取り方は主に6種類あります。全て、最低1区域は残って肝臓が働くようになっています。当然、取る区域が少ないほど、体にかかる負担は少なくなります。主な肝切除の方法を図2に示します。
おとなの肝臓がんの手術では、肝臓そのものが肝硬変で傷んでいる場合が多いので、たくさん切除すると肝不全になりやすいのですが、こどもの肝切除では肝硬変がないため、大きな切除も比較的安全に可能です。

腫瘍の部位による肝切除術式の違い

肝切除手術の実際

肝切除手術の実際

  • 開腹
    お腹を切開します。通常、上腹部を山形に切開することが多いです。腫瘍が大きい場合などは、それに加えてお腹の真ん中を切り足して「逆Yの字(ロゴと似ていることから「ベンツ切開」という俗称もあります)」大きく切開することもあります。
  • 肝臓の剥離
    肝臓は、いろいろな膜で周囲とくっついて固定されています。これらを切って肝臓を取り出しやすくします。
  • 血管、胆管の処理
    肝動脈、門脈、胆管を見つけ、切除する区域に流れ込むこれらの血管・胆管を糸でしばって切っていきます。こうすることで、手術中に出血を減らすことができます。次に短肝静脈という、肝臓と大静脈を直接結んでいる小さな血管(数本)を糸でしばって切っていきます。とても短い血管なので出血しやすく、緊張する部分です。
  • 肝切離
    いよいよ肝臓そのものを切っていきます。超音波やウオータージェットなどの力で切ると、出血を減らすことができますので、通常、このような道具を使います。最後に、肝静脈を処理すると病巣を含んだ肝臓を取り出すことができます。残った肝臓に取り残しがないかどうか、確かめます。エコーを使ったり、特殊な蛍光物質を使って光らせて調べること(ICG蛍光法)もあります。
  • 閉腹
    開腹したキズを縫って閉じます。通常、4層くらいに閉じます。

手術後

肝切除術後の合併症について

  • 胆汁漏
    残った肝臓から胆汁が漏れることです。ドレーンから黄色い液体が出てきます。量が少なければいずれ止まることが多いです。量が多く、減らない場合は再手術して縫合などで止めます。ドレーンから排出されずにお腹の中に貯まることもあります。針を刺して吸引したり、再手術をします。
  • 出血
    手術後に肝臓や血管から出血することがあります。ドレーンから出てくる血液の量や、血液検査でのヘモグロビン値の低下で分かります。多い場合は再手術をして止めます。
  • 肝不全
    残った肝臓が小さ過ぎてうまく働かない場合です。黄疸が進んだり腹水が多くなったりします。血液検査で分かります。対応としては、新鮮凍結血漿を輸血し、肝臓で作ることができなくなっているもの(血液凝固因子等)を補充し、肝臓が再生してくるのを待つことです。肝不全の程度が強い場合には血漿交換をすることもあります。

肝切除の効果判定
他に転移がなく、腫瘍が完全に取り切れていれば、血中AFP値は次第に下がっていきます。下がると言っても術後1週感でゼロになるようなことはなく、通常は3-5日で半分の値になっていきます。

肝切除について、まとめ

以前と比べると、肝切除手術は安全にできるようになりました。しかしそれでも、血管ギリギリのところで剥離をしなければならない症例など、小児外科の最高難度手術の1つであることには変わりはありません。肝芽腫そのものの症例が少ない(日本で年間50程度)ため、施設により経験に差があり、肝切除できる症例でも肝移植を勧められたり、肺転移があるから肝切除はできないと言われることがあります。このような場合は経験豊富な施設でセカンドオピニオンを受けられることをお勧めします。

肝移植

肝切除の項で説明したとおり、切除すると肝臓の区域が1つも残せない場合、あるいは血管が残せない場合、肝切除は不可能ですので肝移植が唯一の救命手段になります。
欧米では脳死肝移植が盛んに行われていますが、日本では脳死ドナー(臓器提供者)は少ないため、基本的に親御さん等から正常な肝臓の一部を切り取って移植する、生体肝移植が行われます。

肝芽腫に対する生体肝移植は既に保険適応となっており、切除不能な肝芽腫に対しての治療法として、確立されたものとなっています。

肝移植を行う場合、基本的には肝臓以外に転移がないことが条件ですが、症例によっては肺転移を切除してから移植を行うこともあります。しかしこのような場合の救命率は、転移がない場合と比べて残念ながら低くなる傾向があります。

肝移植を行う場合、基本的には肝臓以外に転移がないことが条件ですが、症例によっては肺転移を切除してから移植を行うこともあります。しかしこのような場合の救命率は、転移がない場合と比べて残念ながら低くなる傾向があります。

肝移植の準備

肝移植手術は拒絶反応、感染症など肝切除手術と比べて術後合併症の頻度が高く、術前の準備もより入念なものになります。レシピエント、ドナー共に血液検査、CTなどの画像検査などを行います。ドナーからいただく肝臓の大きさがレシピエントに適合するか、ドナーに悪性腫瘍はないか、など詳細に調べます。

肝移植手術

患児(レシピエント)の手術

  • 開腹、肝臓の全摘出
    腫瘍のある肝臓を完全に摘出します。
  • ドナー肝を体に入れる
  • 血管等の吻合
    通常、肝静脈、門脈、肝動脈の順に血管をつなぎます。その後胆管を腸とつなぎます。
  • 閉腹

臓器提供者(ドナー)の手術

通常の肝切除術と同じように、肝臓の一部を切除します。レシピエントの体格に合わせて、外側区のみ、左葉、右葉など取り方を選択します。

手術後

患児(レシピエント)

術後は厳重なICU管理が続けられます。特に重要なことは、出血の有無、移植した肝臓に血液がちゃんと流れているか、肝臓の働きはどうか、拒絶反応はないか、感染症はないか、などです。
通常の手術と違い、移植手術では術後すぐから免疫抑制剤を使います。免疫抑制をすると手術後の大敵である感染症に対して弱くなるので、抗生剤などのきめ細かな管理が必要です。
また、つないだ血管が詰まらないような薬も使いますが、これは裏を返せば出血しやすくなる薬です。このように、移植手術では通常の手術と比べ、リスクの高い治療をしなければなりません。これらをクリアしてようやく手術が成功したと言えます。

術後落ち着いたら、通常は化学療法をすることが多いです。AFPが順調に正常化したら退院が見えてきます。
退院後も免疫抑制剤等の薬を毎日服用します。これは例外を除き、生涯継続しなければなりません。
免疫抑制による感染防止の目的等で、しばらくの間は生活制限があります。これは徐々に解除されていきます。拒絶反応のチェック等が必要ですので、肝芽腫そのものは治癒しても、通院は生涯必要です。
肝移植患者さんは身体障害者1級と認定されます。

臓器提供者(ドナー)

通常の肝切除の術後と同様、1~2週間で退院となります。
術後1ヶ月程度は創部の痛みや不快感があるのが普通です。肝臓手術そのものは、体への負担が比較的大きな手術です。したがって、仕事の復帰までには充分な余裕を持たれることをお勧めします。

肝移植について、まとめ

肝移植の導入により、今まで救命することができなかった高度進行肝芽腫の患者さんを救命することができるようになってきました。肝移植が成功し、肝芽腫も再発せず見違えるように元気になった患者さんも増えています。しかし肝移植手術の合併症は完全になくすことはできておらず、そのために命を落とすこともゼロではありません。また肝移植をしても肝芽腫のコントロールができず、救命できないこともあります。免疫抑制剤も一生飲み続けなければなりません。肝移植は決して万能ではなく、あくまでも最終手段としてお考え下さい。

肺転移巣手術

肝芽腫は肺に転移しやすい腫瘍です。JPLT-2の結果を見ると、転移していない肝芽腫の5年生存率が80%以上あるのに対し、転移のある肝芽腫では50%以下になっています。肝芽腫を治すためには手術で取ることが最も重要であると言われていますが、転移した肝芽腫に対してもこれは当てはまります。神奈川県立こども医療センターでは肺転移巣も積極的に手術をしています。
転移は複数個出ることが多いですが、多発していても、また両側でも手術は可能です。

肺転移とは

肝臓に入った血液は、肝静脈に入り、そこからすぐ近くの心臓を経て肺に入ります。肝臓内の腫瘍からこぼれだした腫瘍細胞が血液の中に入り、肺に定着してできるのが肺転移です。細胞がこぼれだしても化学療法で消去されたり自分の免疫力で退治したりするので、転移はそう簡単には起こりません。しかし化学療法が効かなくなったりすると、転移が成立します。この状態では化学療法は使えず、手術に頼ることになります。

肺転移の手術法

肺転移の手術は、肝臓のように周囲を大きく含めて取るということはしません。転移巣を中心として、ごく小範囲の肺を取ってきます。これは、肺は肝臓のようには再生しないからで、取りすぎると呼吸困難になるからです。
また、このような取り方をしても、そこから再発しやすいことはないことが分かっています。したがって、おとなの肺がん手術のような、片側の肺の1/3や半分を取るような「肺葉切除」は通常しません。

肺転移巣手術の実際

胸腔鏡を使って転移巣を取る病院もありますが、神奈川県立こども医療センターでは必ず開胸手術をしています。その理由は、

  • 小さな転移巣はCTに写りませんが、熟練した外科医の触診では分かります。胸腔鏡ではこの触診ができないため、小さな病巣を見落とす可能性があります。
  • 胸腔鏡下手術では、肺を切る際にステープラーという器具を使います。これで切ると、肺の正常な部分まで多めに取ることになり、その分、肺の機能が低下します。またその針がCTに写ってしまうため、新たな病巣が判別しづらくなります。

手術は下記の順番で進みます。

  • 開胸
    胸を切開します。通常は後側方切開と言って、肩甲骨の下の部分を横向きに切開します。その後、肋骨と肋骨の間(通常は4番目と5番目、あるいは5番目と6番目)を切って広げ、胸(胸郭)の中に到達します。これで肺が見えてきます。この時、麻酔科にお願いして、切る方の肺に(右あるいは左)空気を送らないようにしてもらいます。そうすると、もともとは空気で風船のように膨れていた肺がつぶれ、病巣が見つけやすくなります。これを分離肺換気と言います。
  • 病巣の探索
    肺転移の病巣は、通常肺の表面近くにできます。これを外科医の目と触診で探します。この時、ICG蛍光法という方法を使うと病巣が光って見え、最小0.05mm程度の極小転移も発見することができます(図3)。
  • 病巣の切除
    病巣を小範囲で切除します。切除したところからは空気が漏れるので、そこを縫合します。
  • 閉胸
    肋骨を元通りの位置に戻し、筋膜等を縫ってキズを閉じて終了です。胸の中にドレーンという管を入れ、その先をポンプにつなぎます。これは手術後に出てくる血液や空気を吸い出すものです。
ICG蛍光法により手術中に光った肝芽腫肺転移巣

手術後

肺転移巣切除術後の合併症について

  • 空気漏れ
    肺の切除した部分から空気が漏れることです。ドレーンにつないだ容器の水から泡が出るので分かります。少量であれば徐々に少なくなり、止まります。1週間ほどたっても減らない場合は、滅多にありませんが再手術をして止めることがあります。
  • 出血
    手術後に肺や血管から出血することがあります。ドレーンから出てくる血液の量や、血液検査でのヘモグロビン値の低下で分かります。多い場合は再手術をして止めますが、ほとんどありません。

肺転移巣切除の効果判定
肝臓と同様、肺転移巣もAFPを作りますので、腫瘍が完全に取り切れていれば、血中AFP値は次第に下がっていきます。

肺転移巣手術について、まとめ

成人のがんでは、肺転移があるとかなり厳しい状態と見なされますが、肝芽腫ではそうではなく、しつこく切除をしていくことで救命できることが分かってきました。肺転移は再発することも多く、時には手術が7~8回にも及ぶことがあります。それでも最終的に救命できる見込みがあるため、我々は複数回の手術でも躊躇なく挑戦します。

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